2011 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア民俗文化の新たな枠組みの構築をめざす基礎的研究
Project/Area Number |
22401038
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
古家 信平 筑波大学, 人文社会系, 教授 (40173520)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳丸 亜木 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90241752)
松本 浩一 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (00165888)
丸山 宏 筑波大学, 人文社会系, 教授 (00229626)
武井 基晃 筑波大学, 人文社会系, 助教 (00566359)
|
Keywords | 南西諸島 / 台湾 / 霊的職能者 / 儀礼書 / 口承文芸 / 博物館図録 |
Research Abstract |
本研究課題に沿って今年度は、(1)昨年度に引き続き霊的存在に関する民俗資料の所在確認、(2)南西諸島及び台湾への現地調査、(3)研究成果の検討会を実施した。 (1)に関しては、博物館図録、口承文芸関連文献を中心として、断片的な資料として記録されているものを丹念に収集分類する作業を進めた。本研究課題の対象とする資料は、その他多くの報告資料の中に散在しており、実質的に役に立つ資料はなかなか探索できない性質を持っている。これらのため、沖縄県立図書館、琉球大学図書館を訪問し、当該部分のコピーを取り、資料化を進めた。ただ、昨年度に引き続き作業予定であった筑波大学体育芸術図書館は、東日本大震災により被災したためこの分の資料化が予定よりも遅れている。 (2)南西諸島および台湾の現地調査を行い、霊的職能者のもつ儀礼書の収集とその意味付けの聞き取り調査を行った。実際の儀礼行為の中にそれらの儀礼書がどのように用いられ、依頼者に側にどのような意味が伝達されているのか、という点についても観察記録の中に記載するように心がけた。こうした点を資料化することにより、文献の読解がさらにすすめられるとともに、依頼者と霊的職能者の考え方の齟齬についても明らかにすることができる。 (3)(1)および(2)の作業を進めながら、随時研究分担者相互の研究の進捗状況を確認し、データを交換するために検討会を催した。収集した資料の共有化により、今までの作業の欠落部分を確認するとともに、今後重点的に収集すべき側面を周知することができた。特に、現地調査で補充すべき儀礼について、霊的職能者の職掌の違いを考慮しなければならないことが判明し、来年度以降に生かすこととした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、中国周縁の日本本土、南西諸島、台湾、韓国において、第4の霊的存在を具体的に確認することから始まる。民俗資料の中からそれらを抽出する作業を進めてきた。1番目の物質文化資料から選び出す作業は、ほぼ順調に進んでいるが、2番目のフィールドワークにより現地の霊的職能者の儀礼書と儀礼行為そのものの観察記録、およびそれに対する意味づけに関しては、職能者の秘密主義に阻まれることもあり、いくつかの部分では計画通りに進んでいない。これについては、今後対応を検討していかなければならない。しかし、従来の研究に再検討を迫る資料も集まっており、全体としては、おおむね順調に推移していると言える。3番目のそれらのデータを検討する研究会は随時開催し、不足を補い、次の作業の手はずを整えてきた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も9「研究実績の概要」に示したように、3点の側面から研究を推進することに変わりはない。物質文化資料に関しては、国内の博物館展示図録の調査に加えて、韓国と台湾においても検討を進めることとしたい。フィールドワークは今年度は韓国でも行い、他の3地域のデータと比較検討する準備を進めることとする。台湾の法師、道士の儀礼と対比するため、韓国の巫堂とそれに相当する職能者の儀礼観察資料の整備を行う。南部の多島海地域においてはすでに墓制を手掛かりとして、調査に着手していたので、これを進展させる計画である。台湾の霊的職能者に関しては、台南近郊の法師の儀礼調査を新たに開始する計画であり、前年度の儀礼の意味付けに関する調査の後れを取り戻せると考えている。調査資料の検討会は随時行い、最終年度の研究の取りまとめに向けて調整を進めていく予定である。
|