2011 Fiscal Year Annual Research Report
モンゴル北部永久凍土地帯における森林動態に与える火災の影響
Project/Area Number |
22405022
|
Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
武田 一夫 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (80374768)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝田 智俊 国立大学法人岩手大学, 農学部, 教授 (10089930)
野堀 嘉裕 国立大学法人山形大学, 農学部, 教授 (80237867)
LOPEZ Larry 国立大学法人山形大学, 農学部, 准教授 (20374712)
|
Keywords | モンゴル / 森林火災 / カラマツ / 年輪解析 / 森林バイオマス / 窒素安定同位体 / 気候変動 / 永久凍土 |
Research Abstract |
モンゴル国北部・フブスグル県は、気候変動の影響を受けやすい東シベリアに広がる永久凍土地帯とタイガ地帯の南端に位置し、森林の実態が未解明な研究空白域である。この地域で、主にシベリアカラマツ(Larix Sibirica)林の森林動態に与える火災の影響を自然的・人為的要因について因果関係を明らかにする目的で、4課題について現地観測・調査を実施してきた。その結果、以下の研究成果を得た。 (1)森林火災の激化原因の究明と再生:H22年度に激化原因究明や森林再生の地上部評価を行った。本年度は、再生の違いが、生残した母樹からの種子供給量調査、光量子量の観測、地下部土壌の化学的・微生物学的調査を通して、供給量や光量子量に依存することや、土壌の化学的成分が大きく変わらない中で土壌細菌の数や型に違いが生じることを究明した。 (2)森林バイオマスの評価:H22年度は、カラマツとトウヒ(Picea obovata)について胸高直径と樹高の関数で表す幹材積式と重量式を構築した。本年度は、これらを使って、森林火災跡の調査地を対象に単位面積当たりの森林バイオマスを求めた。また、火災後の根株サイズから焼失前のバイオマスを推定し、火災で焼失したバイオマスを算出した。 (3)気候変動のプロキシーとしての年輪情報取得:H22年度はダルハド盆地の5か所で採取した試料について年輪解析を行った。本年度は、対照区としてフブスグル湖周辺で年輪試料を採取・解析した結果、地域内で年輪幅に共通性が示された。 (4)カラマツの窒素栄養獲得機構の解明:窒素安定同位体(δ15N)の計測を通じて、H22年度は、ダルハド盆地にある森林火災跡地を中心に林内放牧による自然生態系の窒素循環機構を解明した。本年度は、ツァガノール近隣の森林で林内放牧と人間活動に関わる窒素循環機構解明の調査を行い、その影響範囲が判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この2年間、設定した4研究課題についておおむね計画したデータが得られ、その解析とまとめを鋭意進行中である。成果の一部は、すでに国際誌に投稿したもの、また現在投稿準備中のものがあり、おおむね順調に推移している。今後、研究成果の全体像を再構築し、不足部分を補って行く予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年間に得た森林データや気象データで未だ不十分な個所について、H24年8~9月に現地調査を実施する。また、8月の渡航時には、モンゴル政府・森林管理局と研究成果の地元還元に向けて話し合いを行う予定である。さらに、共同研究者として、現在進行中のモンゴル農業大学BatturBanzragch教授、ドイツ・ハノーバー大学GugenBerger教授に加え、カナダ・サスカチュワン大学GuoXulin教授がリモートセンシングによる森林火災の広域調査で加わるため、H24年7~8月にGuo教授と日本で打合せを行う。本プロジェクトの研究成果は、H25年3月にモンゴル農業大学で行う国際シンポジウムで公表する予定である。併せて、モンゴル国内外の研究者に呼びかけ、研究交流を行う。
|
Research Products
(8 results)