2011 Fiscal Year Annual Research Report
ワクチン導入がアフリカでのロタウイルス下痢症および流行株変異に与える影響の検証
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22406014
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中込 とよ子 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (40155693)
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Keywords | ロタウイルス / ワクチン / 血清型 / 流行株 / G8 / アフリカ |
Research Abstract |
世界でもっとも使われているロタウイルスワクチンは,血清型がG1P[8]である単価ワクチンである。この単価ワクチンのマラウイにおける臨床試験での重症ロタウイルス下痢症に対する有効性は49%と低いものであった。本研究では単価ロタウイルスワクチンがマラウイでのロタウイルス下痢症および流行株変異に与える影響を検証することを最終目標に、マラウイで流行しているロタウイルス株の遺伝子解析と、ワクチンと流行株との異同について、遺伝子型の相違およびゲノムRNA全体での相違の解析を行った。具体的には、過去10年間の保存検体から,分子疫学的解析に必要なウイルス株を電気泳動分析にもとづき約40株の細胞培養分離株を選出し、これらのウイルス株を大量培養し、ウイルス粒子とゲノムRNAの精製を行った。また、昨年度の研究においてワクチンの臨床試験時にマラウイで流行していた21株の代表的ロタウイルス株の分離に成功したが、これら21株とワクチン株であるRIX4414株および代表的G8P[4]株であるMAL60を使って全ゲノムの相同性解析をRNA-RNA hybridization法により行った。さらに、この中から5株を選び、VP7、VP4、VP6、NSP4遺伝子分節の塩基配列を決定し、RIX4414株および代表的ヒトロタウイルスを対照に分子系統解析を行った。その結果、マラウイで流行しているウイルス株とRIX4414株との関係は、ワクチンが高い有効性を示している世界の他の地域での流行株とRIX4414株との関係と大きく変わらないことがわかった。すなわち、マラウイでワクチンの有効性が低い原因は、当初、原因としてもっとも疑われた流行株がワクチン株と大きく異なっているためでなさそうである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究では、ロタウイルス下痢症の発生数の趨勢変動解析と遺伝子解析とワクチンと流行株との異同について、血清型の相違およびゲノムRNA全体での相違の解析との2点に重点をおいた研究を行うことを予定していた。,これら2点について当初目的としたところをリバプール大学での滞在と実験を含めて順調に行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
マラウイでは予定通り、昨年11月から肺炎球菌ワクチンが定期接種に導入された。ロタウイルスワクチンの導入は肺炎球菌ワクチンの導入より1年後とされているので、予定通り本年末から定期接種されることを期待してよいと思われ、それまでにマラウイにおけるロタウイルス流行の分子疫学レベルでの基盤を構築することができると思われる。
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Research Products
(4 results)