2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22500362
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
松井 広 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 助教 (20435530)
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Keywords | 脳・神経 / 神経科学 / 生理学 / シナプス / 伝達物質 / シミュレーション / 細胞形態学 |
Research Abstract |
多くの神経細胞同士は、1平方ミクロン以下のごく小さい面で、互いに接しており、このシナプス接合部において、信号の受け渡しが行われている。この狭い空間に、脳における情報処理の本質の多くが詰まっているのだが、シナプス形態のわずかな違いや発現している分子の数・分布等のわずかな揺らぎによって、信号伝達特性が大きく変わることが予想される。本研究では、シナプスの微細構造が神経細胞間の信号伝達特性にどのような影響を与えるのかを調べ、生理的機能を果たすのにどのように役立っているのかを明らかにすることを目的としている。昨年度においては、網膜-外側膝状体(LGN)-皮質へと伝わる初期視覚回路を研究し、視神経線維一本を立て続けに刺激すると、応答が急速に抑制されることを見出した。シナプスから溢れ出た伝達物質が近隣のシナプスの受容体を脱感作させることで応答が抑制されることが明らかになった(Budisantoso,Matsui*,et al.,2012)。しかし、これまでの研究においては、シナプス間隙へと放出されるグルタミン酸分子の数、および、細胞間隙におけるグルタミン酸の拡散係数が、どうしても確定できないパラメーターとして残っていた。そこで、電気生理学・形態学・シミュレーションの全ての面で精緻な解析のしやすいcalyx of Heldシナプスに研究対象を移し、これらのパラメーターを求めることで、細胞間隙におけるグルタミン酸の振る舞いを完全に表現することを目指した。この数値が求まることで、シナプスにおける信号伝達を規定する要因のひとつを確定できるのと同時に、シナプスから溢れるグルタミン酸の効果を、より定量的に評価できるからである。現在、シミュレーションを重ねることで、上記パラメーターを確定することに努めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シナプス間隙における伝達物質拡散を表現するパラメーターを求めることが、本研究プロジェクトの大きな目的であり、これはすでに求まりつつある。続いて、より複雑な微細形態での拡散や、受容体分布等のシナプス構造が変化した場合のシナプス伝達の変化を追うための、技術的な土台はできており、プロジェクトはおおむね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
シナプス小胞内グルタミン酸分子数、および、細胞間隙における拡散係数、これらの数値を求めるのに、二つの指標を使う。ひとつは、単一シナプス小胞放出に対する素量応答(mEPSC)の振幅。もうひとつは、シナプス応答に対する、低親和性競合的阻害剤の効果。これに加えて、シナプス後膜上のAMPA受容体の二次元分布を凍結割断レプリカ標識法で調べ、グルタミン酸の拡散シミュレーションを重ねることで、グルタミン酸の濃度推移の時空間特性を求めることを目指す。既に実験データは整っており、あとはシミュレーションにより検証を進める段階である。また、光感受性タンパク質を発現するトランスジェニック動物を使って、受容体分布の変化を引き起こした際の微細形態をもとに、シミュレーションを重ねることで、シナプス可塑性のメカニズムにまで踏み込む予定。
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Research Products
(2 results)