2011 Fiscal Year Annual Research Report
アストロサイト内カルシウムイオン濃度変動の高次脳機能における役割の解明
Project/Area Number |
22500369
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 三佳 独立行政法人理化学研究所, 行動遺伝学技術開発チーム, 専門職研究員 (70311347)
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Keywords | アストロサイト / カルシウム / IP3 / シナプス / 海馬 / LTP |
Research Abstract |
「アストロサイト内Ca^<2+>濃度変動抑制マウス」においては、アストロサイトがシナプスを取り囲む構造が崩れることにより、グリオトランスミッターのシナプスへの作用効率の低下が生じることが予想される。このことが神経活動に対してどのような作用を及ぼしているかを明らかにするため、「アストロサイト内Ca^<2+>濃度変動抑制マウス」の行動学的解析で観察されている空間記憶の低下の責任領域と考えられる海馬CA1を対象として、Shaffer側枝からCA1錐体細胞へ投射する回路の電気生理学的特性について調べた。 具体的には、in vitro多点平面電極(マルチエレクトロードアレイ)システム(MED64システム:アルファメッドサイエンス)を使用して、急性スライスを用いて海馬のstratum radiatumにおける細胞外電位を記録し、シナプス可塑性について調べた。前年度では、シータバースト刺激により誘発される長期増強(LTP)について調べたところ、僅かながら有為な差が認められ、「アストロサイト内Ca^<2+>濃度変動抑制マウス」ではLTPが減弱していた。しかし差が小さかったため、今年度は刺激の強さ等の実験条件を変えてさらに詳細な解析を行ったところ、LTPにおいて野生型と「アストロサイト内Ca^<2+>濃度変動抑制マウス」の間に有為な差は認められなかった。すなわち、LTPに関しての前年度の結果は再現性がなかった。また、長期抑制(LTD)についても同様に調べたが、こちらに関しても野生型と「アストロサイト内Ca^<2+>濃度変動抑制マウス」の間に有為な差は認められなかった。これらの結果から、「アストロサイト内Ca^<2+>濃度変動抑制マウス」における海馬CA1でのシナプス長期可塑性は正常であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「アストロサイト内Ca^<2+>濃度変動抑制マウス」について、電気生理学的解析が終了したため。
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Strategy for Future Research Activity |
共同研究により、「アストロサイト内Ca^<2+>濃度変動抑制マウス」のアストロサイトにおけるカルシウムイメージングを行う。これまで得られた結果をまとめて学術論文として発表する。
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