2011 Fiscal Year Annual Research Report
睡眠・覚醒時の脳活動パターンに依存するシナプス可塑性の研究
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22500370
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒谷 亨 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 民間等共同研究員 (50195591)
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Keywords | 大脳皮質 / 抑制性伝達 / 錐体細胞 / 長期増強 / 艮期抑圧 |
Research Abstract |
今年度は、5層の錐体細胞と、それにシナプス結合している特定の抑制性ニューロンからペア記録を行い、錐体細胞を覚醒パターンで活動させた場合に、どのような可塑的変化が生じるかを検討した。また、新たな研究対象として、後脳梁膨大部皮質(RSC)2層に存在する錐体細胞の形態学的・生理的特性解析を行った。 生後20-35日令のラット大脳より、マイクロスライサーを用いて、厚さ0.3mmの前額断あるいは水平断切片標本を作製し、人口脳脊髄液中で灌流した。近赤外微分干渉顕微鏡下で、VC5層およびRSC2層の錐体細胞からwhole cellパッチ記録を行った。 1.VC5層の錐体細胞と、その周囲の非錐体細胞(抑制性細胞と推測)から同時にwhole cellパッチ記録を行い、錐体細胞に抑制性シナプス後電流(IPSC)が生じるペアを探索した。特に、fast-spiking neuronと、錐体細胞のペアに注目した。記録電極からの電流注入により覚醒状態を模した活動パターンで錐体細胞を活動させたところ、fast-spiking neuronの単発発火により生じるユニタリIPSCの振幅の平均値が減少した。また、前細胞が発火したにも関わらず、後細胞にユニタリIPSCが生じない確率(failure rate)が増大した。これらの結果は、覚醒の活動パターンにより引き起こされる抑制性伝達の長期抑圧が、シナプス後部に生じることを強く示唆する。またこの結果は、我々のこれまでの報告と完全に一致する。 2.RSC2層の錐体細胞の発火パターンがlate-spikingであること、またそのパターンを決定づけているKチャネルが、Kv1.1、Kv1.4、Kv4.3であることを、Gene-Chip解析、in-situ hybridization、single cell RT-PCR、薬理学的解析などにより明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属元の理化学研究所から駒場へ研究機材を平成22年9月までに移転予定であったが、研究機材を共同で使用していた理化学件研究所の研究者に、研究データを追加するために引き続き研究機材(パッチクランプアンプ)を使用する必要が急遽生じ、機材の移転が平成23年1月以降と大幅に遅れることとなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も従前の研究計画に沿い、大脳皮質の睡眠・覚醒状態依存性の可塑性現象の解明を続ける。我々の最近の研究により、後脳梁膨大部皮質の遅延発火性錐体細胞群が、睡眠・覚醒時に特異的な発火パターンを示すことが明らかになりつつあり、これを研究対象に加えることで、新たな可塑性現象の発見・解明を試みる。
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