Research Abstract |
本研究の目的は,創造的な身体表現活動での「表現の多様性」を育むために,個々の活動者のイメージと動きの生成を促進し,活動者相互の表現を緩やかに繋ぎ,新たな表現の創出を促す「感性的な表現メディア」の構成と,それを活用した身体表現の活動モデルの開発である.この研究目的を達成するために,初年度の平成22年度は,基礎的研究として,感性的な表現メディアであるシャドウメディア(研究分担者:三輪による開発)での身体表現創出の可能性の検討を行った.具体的には,舞踊熟練者2名を対象に,シャドウメディアによる創作実験を行い,その際に表現された運動の3次元の計測と主観調査から,メディアの種類と創出される表現性の関係を検証した.平成23年度は,こうした基礎的研究を受けて,実践的・応用的研究へと進むために,コミュニティや学校の授業等でシャドウメディアを用いた表現活動を企画・実施し,教師やファシリテーターによる人的支援とメディアによる技術的支援とが有機的に連動し,活動者の表現が持続・深化する活動モデルのデザイン化を試みることを目的とした.そして,国立民族学博物館でのインクルーシブな身体表現ワークショップ『影で出会う,影でつながる』や,石川県立ろう学校小学部の授業実践を主な実践現場として,インクルーシブな身体表現活動に感性的なメディアを活用するためには,どのような現場デザインが重要となるのかについて,ファシリテーターや教師という人的支援の側面(西)と,表現メディアという技術的支援の側面(三輪)から検討を重ね,活動プランならびに授業案を作成し,実践を展開した.結果として,個々の活動者が表現メディアと主体的にかかわることで,人的支援のみでは充足されないような表現が多く創出することや,メディアが活動者相互をつなぐ役割を担うことで,身体的なインタラクションやより深い対話が促進される傾向を確認することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年間を通して,身体表現とその技術的支援に関する議論ならびに,実験室等での小規模な実践を繰り返しながら,活動モデルの開発を進めることができた.さらに,作成したモデル案を実践の現場で行い,表現活動の映像記録や活動者ならびにファシリテーター等の感想を収集することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで本研究で展開してきた,学校教育現場やコミュニティ,博物館等でのシャドウメディアを活用した身体表現活動が,研究テーマである「表現の多様性」にどのようにかかわり得ているのかという問題を,ワークショップや授業実践等で収集した映像記録や活動者やファシリテーターの自由記述といった質的データによる分析・検討する.加えて,上記の成果と課題にもとづき,感性的な表現メディアであるシャドウメディアを活用した身体表現活動モデルを再構成し,広く一般市民や教育関係者に向けて,その成果発信のための表現ワークショップを実施する.
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