2010 Fiscal Year Annual Research Report
広域オキシダント汚染における同位体化学を用いた発生起源別寄与解析
Project/Area Number |
22510024
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Research Institution | Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
楢崎 幸範 福岡県保健環境研究所, 環境科学部・大気課, 専門研究員 (00446866)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
力 寿雄 福岡県保健環境研究所, 環境科学部・大気課, 主任技師 (40446860)
山本 重一 福岡県保健環境研究所, 環境科学部・大気課, 主任技師 (60446862)
大久保 彰人 福岡県保健環境研究所, 環境科学部・大気課, 専門研究員 (30446827)
濱村 研吾 福岡県保健環境研究所, 環境科学部・大気課, 専門研究員 (00446874)
天野 光 福岡県保健環境研究所, 日本分析センター, 技術参事 (80354851)
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Keywords | 越境大気汚染 / 黒色炭素 / 硫酸塩 / 浮遊粒子状物質 / オゾン / ベンゼン / 同位体分析 / 放射性同位体 |
Research Abstract |
私たちが住む西日本では越境大気汚染によるオキシダント発生等,アジア大陸からの大気汚染物質の輸送が問題となっており,ここ数年福岡を含む日本海沿岸地域での黄砂や煙霧等による視界の悪化頻度が増加傾向にある。なかでも2010年5月20日早朝から21日にかけて,北部九州を中心に濃い霧に包まれ視程が悪く,鉄道や航空機等の交通機関に支障をきたした。その間の大気汚染物質濃度及び支配的であった気象条件と重なり合った有害化学種の移流現象及び発生要因等から,個々の有害因子の探索を行った。そして,それらの毒性を総体的に評価することを目的に,環境変異原物質や発癌性物質あるいは有害化学物質等による大気汚染度を評価した。また,併せて大気汚染物質中の有芽胞細菌及び真菌についても調べ,健康への影響について考察した。 汚染物質は中国東部沿岸域から東シナ海,九州南部へと移動した高気圧辺縁流の強い西風によって,韓国及び中国北部沿岸から日本列島にもたらされた可能性が窺えた。また,主要な汚染物質は,粒子状の黒色炭素,黄砂粒子や飛灰(フライアッシュ),鉛及び硫酸アンモニウム並びにガス状のオゾン及びベンゼンであった。硫酸塩濃度は過去最大の濃度であり,その他の汚染物質も高濃度で流入していたことが分かった。さらに,大気中の粒子状物質が水蒸気の凝結核となり,雲物理過程に深く関与して濃霧を発生させたことも明らかにした。今回の研究ではヒトの健康に直接影響を与える環境変異原物質や病理細菌は検出されなかったが,汚染大気中には化学物質の他,黄砂や花粉が一緒に観察されており,これらの複合大気汚染がアレルギー疾患を助長することも懸念される。これらの越境大気汚染は,1~6月及び10~12月に顕著であり,特に4月の黄砂及び5月の煙霧の出現頻度が増加した。
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Research Products
(6 results)