2011 Fiscal Year Annual Research Report
広域オキシダント汚染における同位体化学を用いた発生起源別寄与解析
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22510024
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Research Institution | Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
楢崎 幸範 福岡県保健環境研究所, 環境科学部・大気課, 専門研究員 (00446866)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 重一 福岡県保健環境研究所, 環境科学部, 研究員 (60446862)
大久保 彰人 福岡県保健環境研究所, 環境科学部, 課長 (30446827)
濱村 研吾 福岡県保健環境研究所, 環境科学部, 専門研究員 (00446874)
安武 大輔 福岡県保健環境研究所, 管理部, 研究員 (30446835)
天野 光 (財)日本分析センター・東邦大学, 大学院, 技術参事・教授 (80354851)
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Keywords | 越境大気汚染 / 黒い黄砂 / 硫酸塩 / 浮遊粒子状物質 / オキシダント / 変異原性試験 / 同位体分析 / 放射性同位体 |
Research Abstract |
北部九州の広域で観測されるオキシダント汚染について,春期を中心に環境動態解析及び健康影響評価を実施した。西日本では大気環境が悪化し、春先から梅雨にかけて都市部以外でもオキシダントの上昇を伴い空がかすむ現象が頻発した。また、春期には、黄砂の飛来回数や規模が増加していることはよく知られている。さらに近年、黄砂の頻発する時期に、北部九州に設置している大気常時監視局において、国内の影響とは異なる要因で大気汚染物質が増加する兆候を観測してきた。しかし、今まで黄砂と大気汚染物質との詳細な関連性は定かではなかった。われわれは、従来の大気常時監視項目に加え無機成分分析、有機成分分析並びに電子顕微鏡撮影、変異原性試験を始めとした病理細菌検査を加え、2010年4月1日より観測を開始している。これまで、強い移動性高気圧が発達した気象条件下の試料から一見して黄砂とは判別が付かない黒色をした粉じんの増加を観測した。それが前日から確認されている越境大気汚染物質に汚染された黄砂によるものであることを突き止め,大気汚染物質に曝された黒い黄砂の飛来を観察することに成功した。この黄砂は、ゴビ砂漠で発生した砂塵が、強い西風によって運ばれてくる途中で汚染された気塊と混在し、大気中の気相・固相・不均一反応で生成された越境大気汚染物質であると結論づけた。このような大気汚染物質で汚染された黒い黄砂を観測したのは、世界でも稀である。この結果は、広域オキシダント汚染をもたらす気塊が中国大陸で発生したものであることを裏付ける確固たる証拠であると同時に越境する大気汚染物質の起源とルートの解明にも貢献する。また、いまだ謎が多い黄砂の大気中での変質メカニズムの解明やアレルギー源としての黄砂粒子の仕組みの理解にも役立つと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オゾンの高濃度現象と関連性が高く、発生源を裏付ける化学物質の探索を実施した。また、オゾン前駆物質を含む一次汚染物質の連続した濃度を測定し、二次汚染物質であるオゾンの生成や時間変化等の連関を調べた。そして、越境大気汚染の科学的な確証を得るため、放射化学分析、安定同位体分析及び流跡線解析を駆使して起源推定の確実な担保となる因子を検討した。さらに、越境する大気汚染物質で汚染された黒い黄砂の検出は広域オキシダント汚染が中国大陸を起源としていることを直接的に示す成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究分担者及び連携研究者と年3回の研究推進会議を開催し随時評議する。第1回は成層圏起因オゾン濃度を決定する。第2回目は越境大気汚染起因オゾン濃度を決定する。そして大気中オゾン濃度のうち、成層圏起因オゾン濃度及び越境大気汚染起因オゾン濃度を除いた残りのオゾン濃度を国内生成オゾン濃度と見なすことで間接的に国内生成オゾン濃度を求める。第3回目は最終的な目標である高濃度オゾンの発生起源別濃度把握とその寄与割合を求め、その妥当性を検証する。
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Research Products
(7 results)