2011 Fiscal Year Annual Research Report
外来性陸貝オオクビキレガイの原産地国の推定、生殖戦略と生態系への影響
Project/Area Number |
22510032
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松隈 明彦 九州大学, 総合研究博物館, 教授 (90108647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三島 美佐子 九州大学, 総合研究博物館, 准教授 (30346770)
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Keywords | オオクビキレガイ / 原産地 / イベリア半島 / ヤマボタルガイ / ウルルン島 |
Research Abstract |
1988年に北九州市で初めて確認されたオオクビキレガイは、北九州市を中心に福岡市東区から山口県宇部市にかけて市街地の畑や庭で普通に見られるようになり、その他の地域ではスポット的に分布する。23年度に新たに分布が確認された地域は大阪府堺市、兵庫県尼崎市、伊丹市、山口県美祢市、岩国市で、いずれも分布範囲は狭く、年100m以下という自力拡散速度から推定して、ここ数年以内に侵入したものと思われる。 ・Lance et al. (2010)のマイクロサテライトマーカーについて、温度条件を変えてプライマー増幅チェック、多型チェックを行ったところ、多型の存在が暗示された(佐伯2012MS,佐野2012MS)。 ・今回、イベリア半島のポルトガル(リスボン)、スペイン(マドリド近郊、マラガ、コスタ・デル・ソール、バレンシア市内および近郊、タラゴナ、バルセロナ)で採集したオオクビキレガイの晴報を加えた結果、日本のものど全く同じ塩基配列を示す個体が、これまで知られていたアスマル(ポルトガル)に加えて、マラガ、バレンシア、バルセロナで見つかり、分布範囲がさらに東方へ広がっている可能性も含めて、原産地を検討する必要がある。 ・G.M.Park教授(Kwandong University)の協力で韓国ウルルン島のヤマボタルガイを採集し、ミトコンドリアCOI遺伝子の塩基配列を確認したところ、福岡、八丈島を含む日本海沿いのクレードに属することが分かった(佐伯2012MS)。 ・ウルルン島産ヤマボタルガイの塩基配列は、福岡のものとは異なり、遺伝的多様性が見られない福岡の個体群が、近年にウルルン島からもたらされた可能性は支持されない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地中海沿岸地域の標本との比較では、新たにポルトガル、スペインの標本が多数採集できたことにより、日本の個体群と同じ塩基配列の個体群がイベリア半島のかなり広い範囲に分布していることを明らかにすることができた。 マイクロサテライトを用いた分析は、東日本大震災の影響で、東北大学での技術の習得と分析ができず、まだ着手できていない。 国内のオオクビキレガイ個体群の塩基配列の単純性については、分析した標本数、産地数を増やしても確かであることが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
・地中海沿岸地域との比較をより確かなものとするために、試料が不足しているポルトガル、スペイン中部・北部、フランス南部、イタリア、ギリシャ及びアフリカ北岸の標本の採集を行う。 ・福岡県のヤマボタルガイと国内のオオクビキレガイは、ともにミトコンドリアCOI遺伝子の塩基配列に多様性が見られない。ヤマボタルガイと比較することによって、オオクビキレガイに単調な遺伝的構成ができる過程を推測し、外来種の拡散に果たす役割を考察する。
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