2011 Fiscal Year Annual Research Report
肺線維化と発癌をエンドポイントとしたナノマテリアルの慢性健康影響評価に関する研究
Project/Area Number |
22510035
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
石原 陽子 久留米大学, 医学部, 教授 (50203021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 豪 久留米大学, 医学部, 助教 (80383751)
中尾 元幸 久留米大学, 医学部, 助教 (60610566)
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Keywords | ナノマテリアル / 肺線維化 / 発癌 / リスク評価 / ナノ粒子 / 動物実験 / 毒性試験 / 慢性暴露 |
Research Abstract |
In vivo実験の細胞毒性試験や変異原性試験で陰性であったフラーレン粒子(C60)とフラーレンウイスカー(FNW)をICRマウスに気管内単回投与(1μg~1mg/匹の4群と対照群の計5群)を行い、亜急性及び慢性暴露影響について検討した。その結果(1)投与6ヶ月では死亡例は認めず、肺組織の異常所見や血液像及び血液生化学や気管支肺胞洗浄液(BAL)の指標に異常は認めなかった。(2)1.5年生存率は、対照群で100%であったのに対してFNW投与群とCO60群でそれぞれ約69%、約84%であった。生存時間分析では、対照群>C60群>FMV群の順に生存時間が減少した。(3)1.5年経過観察中の死亡動物の剖見では、FNW群でのみ1μgと10μg投与マウスで雌雄各1匹ずつ肺腫瘍形成を認めた。肝腫瘍はFNW群で1/16例、C60群で2/15例観察された。(4)1.5年時生存動物の剖検では、肺腫瘍形成は10μg投与C60群の1匹のみで、肝腫瘍形成はFNW群で2/22例、CO60群で3/26例観察された。腫瘍以外の肺異常所見は、FNW群で2/22例、CO60群で2/26例であった。(5)肺又は肝腫瘍を認めた動物の脾臓重量は対照群と比較して有意に高値を示し、脾細胞表面マーカーCD4/CD8、CD45+CD86、CD45Rが異常値を示す例が多かった。(6)FNW,C601mg投与1年後の肺組織DNAマイクロアレイ解析では、対照マウスと比較して2倍以上の遺伝子発現あるいは発現低下を示した遺伝子数は、FNWで161と88、CO60で126と58であったが、特定の発癌関連遺伝子の発現は明確ではなかった。 以上のC60とFMVの亜急性、慢性暴露実験から、in vitro実験結果とin vivo実験結果の不一致と気管内単回投与の慢性暴露で肺障害のみならず肝障害も惹起されることが示された。今後、追試試験を行うと共に肺障害や発癌と試験試料の形状差の影響についても詳細な検討を加える予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画通りに粒子気管内投与による急性及び慢性暴露実験を実施し、1年半の慢性暴露実験を終了し、現在臓器組織や血液などの試料の分析中で、概ね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年には、これまで得られたin vitro,in vivo実験結果の総括に向けてより研究を推進すると共に、これまで報告されていないいくつかの新知見を得ていることから、さらに確認実験を行いその毒性の機序についても解明を進める予定である。
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Research Products
(1 results)