2011 Fiscal Year Annual Research Report
放射線被曝影響解析に向けた線量付与の統計的モデルの構築
Project/Area Number |
22510055
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊達 広行 北海道大学, 大学院・保健科学研究院, 教授 (10197600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 香織 北海道大学, 大学院・保健科学研究院, 助教 (80344505)
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Keywords | 放射線被曝影響 / 電子線トラック / 電離・励起クラスター / 二本鎖切断 / 細胞生存率 / 免疫蛍光染色法 / 非致死確率 |
Research Abstract |
本研究は、生体細胞に照射した放射線の影響を、電子線飛跡(トラック)によるエネルギー付与の計算機シミュレーションと、細胞への放射線照射後の細胞核損傷の観測実験、の両者によって明らかにすることを目的としている。 本年度の成果を以下に列挙する。 (1)光子線が生体組織内に生み出す電子線が細胞核内で起こす電離と励起の凝集度を、これまで、AI(AggregationIndex)という指標で評価する方法を提案してきたが、これにより電離・励起のかたまり(クラスター)サイズを分類できることが分かり、クラスターサイズと細胞核内DNAの損傷(二本鎖切断)数との関係を明らかとした。 (2)申請者らが提唱してきた放射線量と細胞生存率の関係を表すNLP(Non-LethalProbability)モデルについて、実験的生存率へのカーブフィッティングによりモデル公式でのパラメータを決定すると共に、その一致度を、AICやG-valueといった数理的指標により評価した。今日広く利用されているLQ(Linear-Quadratic)モデルの他、数種類の異なるモデルとも比較し、NLPモデルでの公式が実測値をよく再現することを確認した。 (3)CHOK1細胞及びH1299細胞を用いて、Clonogenicassay法を行った。また、γ-H2AX抗体を用いた免疫染色法によってDSB数を観測し、光子線の線エネルギーと損傷数の関係について比較を行った。報告されている文献データも踏まえ、100kVpX線、200kVpX線、137Csγ線、60Coγ線、Linac-6MVX線照射におけるCHOK1細胞、200kVpX線および6MVX線照射におけるH1299細胞の生存率曲線から、細胞核内の損傷数などの推定を行い、光子線のエネルギーが低くなるにつれ、細胞生存率が低下することを明示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に予想した細胞生存率の傾向が確認されると共に、提案したモデルの妥当性も確かめられたことから、順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、より多くの実験を重ねてこれまでの知見を評価する他、提案したモデルにおけるパラメータの意味を生物学的な観点から明らかにする予定である。
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Research Products
(7 results)