2010 Fiscal Year Annual Research Report
原子状窒素により処理された化合物半導体表面構造の検討
Project/Area Number |
22510117
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
大竹 晃浩 独立行政法人物質・材料研究機構, 量子ドットセンター, 主幹研究員 (30267398)
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Keywords | 希薄窒化半導体 / 表面再配列 / 分子線エピタキシー / ガリウムヒ素 |
Research Abstract |
本研究では、窒素活性種を照射したガリウムヒ素(GaAs)表面の構造と電子状態を原子レベルで評価することにより、GaAs結晶中への窒素(N)原子取り込みのメカニズムを解明し、高N濃度のGaNAs結晶作製に向けた指針を得ることを目的としている。 本年度は、窒素ラジカルを化合物半導体表面へ照射するために、物質・材料研究機構で所有する分子線エピタキシー(MBE)装置に窒素ラジカルガンを取り付けるとともに、MBE装置の真空排気系を改良した。次に、窒素プラズマの光学スペクトルの評価を通して、原子状窒素発生のための条件(窒素流量、印可電力等)を確立した。本研究では、窒化後にすみやかに真空度を回復させるため、窒素流量を0.04sccmと設定した。その際の真空度は7x10^<-7>Torrである。この条件下で、瞬時にラジカルのon/offを行うことのできる条件を探った結果、印加電圧200Wで窒素ラジカルが発生し、80W以下ではほとんど発生しないことが明らかとなった。 上記の条件のもと、GaAs(001)表面に窒素プラズマを照射し、窒素吸着量および表面構造の変化の様子を評価した。照射条件(照射時間、基板温度)や初期表面構造はもとより、バックグラウンドのAs分圧に依存して、窒化の状態は異なることが明らかとなった。具体的には、(i)基板温度が低い方が窒素の吸着量が多い(基板温度が高い場合には一旦吸着した窒素が脱離する)、(ii)バックグランドのAsが存在すると窒素の吸着が阻害される。窒素吸着表面の原子構造については、過去に報告のある(3x3)構造が観測された。(3x3)構造の出現する条件はきわめて限定的で、窒素吸着量0.1-0.2MLの範囲でのみ観測される。窒素量が0.2MLを超えると(3x3)構造は消滅し、温度が高い場合にはGaN島が形成されはじめる。また、バックグラウンドにAs分子が存在する場合にも、(3x3)から(2x4)への構造変化が起こる。これらの予備実験の結果は、次年度以降の窒素取り込みメカニズムの解明に向けて重要な知見となる。
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