2011 Fiscal Year Annual Research Report
原子状窒素により処理された化合物半導体表面構造の検討
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22510117
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
大竹 晃浩 独立行政法人物質・材料研究機構, 先端フォトニクス材料ユニット, 主幹研究員 (30267398)
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Keywords | 希薄窒化半導体 / 表面再配列 / 分子線エピタキシー / ガリウムヒ素 |
Research Abstract |
本研究では、窒素活性種を照射したガリウムヒ素(GaAs)表面の構造と電子状態を原子レベルで評価することにより、GaAs結晶中への窒素(N)原子取り込みのメカニズムを解明し、高N濃度のGaNAs結晶作製に向けた指針を得ることを目的としている。 本年度は、昨年度までに確立した条件の下で窒化実験を行い、窒化の条件に依存して出現する表面構造を同定するとともに、その原子配列を評価した。分子線エピタキシー法によって作製したGaリッチ(6x6)およびAsリッチ(2x4)表面に460、500、540、580℃の各温度で窒素の照射を行い、表面の周期性をRHEEDで確認した後、X線光電子分光法によって表面の組成を評価する。特に、窒素の吸着量はもとより、窒素吸着にともなうGa/As組成の変化の有無に着目する。同時に、走査トンネル顕微鏡観察によって表面の原子構造に関する知見を得た後、RHEEDによる構造解析を行い、窒素吸着表面の原子構造を評価した。 460-540℃でGaAs(001)-(6x6)表面に窒素を30秒間照射すると(3x3)周期を持つ吸着構造が出現するものの、580℃では(3x3)構造はきわめて不安定であり、窒化終了直後から(6x6)への構造変化が見られる。一方、(2x4)表面上にAs分子線照射下で窒素を照射すると、(3x3)および(2x4)構造が混在した表面が現れる。両者の比は基板温度の増加とともに減少し、580℃で窒化した表面はほぼ(2x4)構造によって構成される。上記STMおよびRHEED観測結果とXPS測定の結果から、As分子線照射によってNの吸着が抑制されることと、基板温度が低くなるにつれてN吸着量が増加することが分かる。N照射後に観測される(2x4)表面にも低濃度のNが吸着しており、その吸着サイトをRHEED rocking curve解析によって検討したところ、β2(2x4)構造のAs-As dimerブロックの直下(第三層目)のAsサイトをNが置換することが明らかとなった。このサイトに原子サイズの小さいNが取り込まれると、最表面にAs-As dimerが存在することによって生ずる圧縮歪みが緩和され、このことがN吸着構造を安定化させていると結論できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、本年度中にGaAs(001)表面での安定な窒素吸着サイトを決定することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度となる来年度は、(001)以外の面方位における窒化過程を詳細に調べ、窒素取り込みにおよぼす表面原子配列、基板温度、面方位、As分子線の有無等を検証する。
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