2011 Fiscal Year Annual Research Report
確率ボラティリティの影響を受けるフラクタルマーケットの研究
Project/Area Number |
22510161
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
成田 清正 神奈川大学, 工学部, 教授 (10211450)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
進藤 晋 神奈川大学, 工学部, 教授 (60322533)
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Keywords | 確率ボラティリティ / フラクショナルブラウン運動 / ハースト指数 / オプションの価格付け問題 / インプライドボラティリティ / ブラック・ショールズ方程式 / オルンシュタイン・ウーレンベック過程 |
Research Abstract |
ブラック・ショールズによる危険資産の変動揺らぎは古典的な標準ブラウン運動過程を用いて定式化され、リスクの程度を表すボラティリティは定数として扱われている。しかし、実際の金融市場の揺らぎは長期あるいは短期の過去の傾向から影響を受け、しかも、ボラティリティは定数ではなく、時間の経過でランダムに揺れ動く確率過程(確率ボラティリティ)である。 本研究では、確率ボラティリティを構成する因子が、統計的な自己相似性と過去履歴への依存性を表わすバースト指数を持つフラクショナルブラウン運動過程から導かれるオルンシュタイン・ウーレンベック過程の場合に、オプションの価格付け問題を解いて、次のような成果を得た。 1オルンシュタイン・ウーレンベック過程には平均回帰性があり、長い時間後には不変測度を持つが、その平均回帰が急速スケールあるいは遅速スケールでモデル化される場合について、オプションの価格関数の偏微分方程式を導出し、特異摂動あるいは正則摂動の解析手法により、価格関数を決定した。 2急速な平均回帰モデルは長期間での取引、また遅速な平均回帰モデルは短期間での取引に係わることを確認し、それぞれの場合に対して、ブラック・ショールズ型の修正オプション価格公式を得て、観測価格から陰的に定まって実務的に役立つとされるインプライドボラティリティの漸近公式を導いた。 3他大学の研究者を招いて研究の知見を確認するセミナーを行い、研究の成果を教育へ還元する講演会を5回開催し、IT教材開発にも協力して研究と教育の双方向的なコラボレーションを高めた。 4研究成果を海外の英文論文1報(49頁有り)、国内学会の口頭発表14報に纏めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
金融リスクの程度を表すボラティリティを、フラクショナルブラウン運動過程の影響を受けるオルンシュタイン・ウーレンベック過程を因子とする確率ボラティリティへ拡張してオプションの価格方程式を導き、それを、 1任意のバースト指数を持つ長期記憶・短期記憶のフラクショナルブラウン運動過程の場合に解いた。 2急速あるいは遅速のそれぞれの平均回帰モデルのオルンシュタイン・ウーレンベック過程の場合に解いた。 3特に、オプションの理論価格と観測価格から陰的に定められるインプライドボラティリティの漸近公式を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
確率ボラティリティの因子を急速あるいは遅速の平均回帰モデルのオルンシュタイン・ウーレンベック過程を用いて表したのは、唯単に急速あるいは遅速という、どちらか一方のスケール変換で金融市場のリスクを表現したに過ぎない。確率ボラティリティの因子が1つのスケール変換だけで表されるというのは、制約が強い。 したがって、急速な平均回帰と遅速な平均回帰をする2つのオルンシュタイン・ウーレンベック過程が因子として同時に含まれているような確率ボラティリティの場合に、すなわち、マルチスケールを持つフラクショナル確率ボラティリティから影響を受ける場合に、オプションの価格付け問題を解決することが今後の課題である。
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Research Products
(16 results)