Research Abstract |
本研究課題では,大規模雪崩に対する森林の減勢効果を明らかにするために,雪崩の流下を運動モデルで再現し,森林の有無により雪崩の経路や到達距離にどれくらい違いがあるかを調べる計画である.そのために,妙高山域の幕ノ沢を対象に雪崩の流下を運動モデルで再現することを試みた.使用した運動モデル(TITAN2D)は,土石流や火砕流を想定した乾燥粒状体の運動を実際の地形(GIS)上でシミュレーションする目的で開発されたもので,空気抵抗の無視できるスケールで,非圧縮性,非付着性を仮定している.雪崩の厚さhと流れ方向の速度v(厚さ方向の平均値)を変数とし,雪崩本体の広がりと速度分布の変化を計算することができる.基礎方程式は質量保存式と運動量保存式で与えられる。本年度は,雪崩発生区の位置,面積,始動積雪深,雪崩の内部摩擦角や底面摩擦角などの様々な条件を変えて雪崩の速度や広がりを比較した.雪崩の速度は,底面摩擦角によって大きく変わり,底面摩擦が小さいほど最高速度が大きくなった.底面摩擦が大きいと,雪崩は沢筋に沿ってまとまって流下するが,底面摩擦が小さくなると最短経路をとって広がりながら流下し,底面摩擦角によって流下経路にも大きな違いが生じることがわかった. また,冬期は幕ノ沢において地震計,雪崩発生検知システム,ビデオカメラによる雪崩のモニタリング観測を行なった,本年度は大規模な雪崩は確認されなかった.幕ノ沢では,雪崩発生時の状況を知るための気象観測(気温,降水量,積雪深)および積雪観測も行なった.これらの現地観測は,雪崩の運動モデルを検証するためのデータセットを蓄積する意義があり,雪崩の運動モデルを構築し,雪崩の運動に関する理解を深めるために重要である.
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