2010 Fiscal Year Annual Research Report
代謝酵素の基質認識機構解明および医薬候補化合物の代謝予測システムへの応用
Project/Area Number |
22510229
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
赤松 美紀 京都大学, 農学研究科, 准教授 (70183134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榊 利之 富山県立大学, 工学部, 教授 (70293909)
生城 真一 富山県立大学, 工学部, 准教授 (50244679)
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Keywords | 代謝酵素 / CYP / ケミカル・ゲノミクス / 基質認識 / 代謝物予測システム / 構造活性相関 |
Research Abstract |
多くの医薬品は経口投与により腸管から吸収され、ヒト体内に取り込まれた後、肝臓などに存在する代謝酵素により代謝されて体外へ排出される。薬物代謝に関与する酵素系は、主にcytochrome P450(CYP)スーパーファミリーであり、数種の重要なCYP代謝酵素が存在する。これらのさまざまな代謝酵素が化合物のどのような構造的特徴を認識して代謝反応を引き起こすかを知ることは、創薬科学においてきわめて重要である。本年度は、まず、主要代謝酵素であるCYP3A4および遺伝子多型で日本人に欠損の多いCYP2C19を取り上げ、農薬の一つTebufenozideをモデル化合物として、その代謝物の同定を行った。その結果、ヒトCYP3A4では、それぞれB環エチル基1位(M1)、A環メチル基、tert-ブチル基が水酸化された3種の代謝物が得られた。一方、CYP2C19の場合、M1を含むB環エチル基のみが変化した3種の代謝物が得られた。また、両酵素の主要代謝物であるM1が不斉炭素を持つことから、各CYPにより生成したM1の立体異性体比に基づき、その立体選択性について検討した。M1のRS比率は、それぞれ、CYP3A4の場合R:S=333:67、CYP2C19の場合R:S=2:98であった。異性体比から、CYP2C19はCYP3A4より立体選択的にTebufenozideのB環エチル基1位を代謝することがわかった。各代謝物生成の反応速度定数も求めた。M1の立体異性体比の決定に時間がかかったため、他の化合物についてのスクリーニングは次年度の実施となったが、代謝物のin silico予測を先に行い、ドッキングシミュレーションとTebufenozideにおける水素原子引き抜きのエネルギー計算に基づき、各CYPによるTebufenozide酸化部位の予測が可能となったため、代謝予測システム構築の基盤が築かれた。
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