2011 Fiscal Year Annual Research Report
代謝酵素の基質認識機構解明および医薬候補化合物の代謝予測システムへの応用
Project/Area Number |
22510229
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
赤松 美紀 京都大学, 農学研究科, 准教授 (70183134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榊 利之 富山県立大学, 工学部, 教授 (70293909)
生城 真一 富山県立大学, 工学部, 准教授 (50244679)
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Keywords | 代謝酵素 / CYP / ケミカル・ゲノミクス / 基質認識 / 代謝物予測システム / 構造活性相関 |
Research Abstract |
多くの医薬品は経口投与により腸管から吸収され、ヒト体内に取り込まれた後、肝臓などに存在する代謝酵素により代謝されて体外へ排出される。薬物代謝に関与する酵素系は、主にcytochrome P450 (CYP)スーパーファミリーであり、数種の重要なCYP代謝酵素が存在する。これらのさまざまな代謝酵素が化合物のどのような構造的特徴を認識して代謝反応を引き起こすかを知ることは、創薬科学においてきわめて重要である。 本年度は、農薬の一つであるTebufenozideの類縁体について、CYP3A4による代謝反応を行い、LC/MS,LC/MS/MSを用いて代謝物構造の同定を行った。LC/MSのみでは、同定は困難であったが、LC/MS/MSによりほぼ代謝物の構造を同定することができた。ただし、疎水性の高い類縁体については、代謝反応の際にアセトニトリルに化合物を溶解するが、溶解性において問題が生じ、代謝物同定に必要な濃度の溶液を調製するのに困難が生じた。そのため、詳細な実験方法について検討を行った。その結果、代謝反応を効率よく行う系を確立することができた。 昨年度、代謝物のin silico予測のための方法論として、ドッキングシミュレーションおよび化合物の各位置における水素原子引き抜きのエネルギー計算を行ったが、その条件について、さらに詳細に検討した。ドッキングソフトウェアとしては、GOLDおよびFREDが使用可能であるが、FREDの方が実験結果をより良く再現することがわかった。また、エネルギー計算では、まず、分子軌道法MNDO/AM1その後、密度汎関数法(DFT法)のB3LYPを用いて、基底関数6-31G*で水素原子の引き抜きエネルギーを計算した。これらの手法により、各CYPによるTebufenozide類縁体酸化部位の予測が可能となったため、代謝予測システム構築の基盤が築かれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一般に農薬は疎水性の高い化合物が多いため、代謝反応の際に溶解性において問題が生じ、代謝物同定に必要な濃度の溶液を調製するのに困難が生じた。しかし、本年度、詳細な実験方法につして検討を行い、代謝反応を効率よく行う系を確立したため、今後の研究進展には何の問題もない。
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Strategy for Future Research Activity |
できる限り、多様な構造の農薬関連化合物についてスクリーニング、代謝物の同定を行い、データを得る。各種データベースで医薬に対して得られている代謝物データも補完的に利用するが、本研究の最大の特徴は実際に実験データを得て、それを代謝物予測システムの構築に利用する点であり、データの質と量が重要である。これまでの我々の研究において得られたin silico予測手法が妥当であるかどうかの検討を行い、ケミカル・ゲノミクスの手法を応用して代謝物予測システムの構築を目指す。
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