2011 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカの開発=発展におけるパラダイム・シフトに関する総合的地域研究
Project/Area Number |
22510264
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
島田 周平 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90170943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 至 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 教授 (60191938)
高田 明 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (70378826)
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Keywords | アフリカの開発=発展 / 開発阻害要因 / アフリカの潜在力 / パラダイム・シフト / 総合的地域研究 |
Research Abstract |
本研究では、アフリカの開発=発展のために、従来は阻害要因とされてきた「アフリカ的特徴」を明確化し再評価しつつ、こうした特徴がアフリカの開発=発展のために有する潜在力を発掘して、それを開発計画に活用するためのパラダイム・シフトを、総合的な地域研究の手法によって構想することを目的としている。前年度の研究には、アフリカで実施されてきた開発計画が失敗してきた要因を分析し、その結果としていくつかの「アフリカ的な特徴」を明らかにした。平成23年度には、さまざまな文献を収集して分析し、また、研究会における討論を繰り返すことをとおして、「アフリカ的な特徴」が有する価値と潜在力を再評価することを試みた。 その結果、アフリカでは親族などの社会関係を通じて、食糧をはじめとするさまざまなモノを分配することを義務づけるという慣習がひろくみられ、それは資本の蓄積や再投資を妨げると論じられてきたが、こうした分配システムは、旱魃などの影響をつよく受ける窮乏時には、重要なセーフティ・ネットとして機能していることを明らかにした。また、アフリカには、たとえば病気を治療するときに占い師に頼るなど、近代合理主義という観点からは非合理に思われる思考様式がひろくみられるが、こうした文化的な行動は、当該の人びとが、グローバリゼーションが急速に進行する状況のもとで、「われわれ」という民族アイデンティティを形成・維持してゆくために非常に重要な役割を果たしていること、そしてまた、こうした慣行によって文化的多様性が保全されていることを解明した。さらには、アフリカ人は一般に「時間にルーズである」「勤労意欲に乏しい」というように経済的に非効率であると批判されるが、必ずしも効率や生産の最大化を目指さないことによる「豊かさにいたる道」の可能性についても、議論を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3年計画で実施しているが、初年度には、これまでにアフリカで実施されてきた開発の失敗例を分析し、開発阻害要因を明確化すること、そして第2年度には、開発阻害要因を再評価しつつ、「アフリカ的な特徴」を抽出することを目標として、実施してきた。この2年間では、この目標をおおむね達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、京都大学に所属する3名の教員によってて実施してきたが、研究代表者の島田は、平成24年度4月からは東京外国語大学に転任した。しかし、電子メールなどを利用して参加者のあいだでは密接なコミュニケーションを実現するように努力し、また、東京と京都で研究会を開催することによって、研究体制を維持することが可能である。
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