2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22510293
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
宮崎 聖子 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (70401601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 信 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (60314457)
松沼 美穂 群馬大学, 教育学部, 准教授 (40438304)
上杉 妙子 専修大学, 文学部, 兼任講師 (90260116)
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Keywords | 法制 / 慣習 / 家族 / 植民地 / 軍隊 / 混血 / 境界 / 通婚 |
Research Abstract |
吉田はオランダ領東インドにおける婚姻法制の研究を進めている。オランダにおいて調査を実施し、王立言語地誌民族研究所、ライデン大学などで資料収集を行った。今回のフィールド調査では、これまで入手が困難であった新聞資料を入手できたのが大きな収穫であった。さらにライデン大学、ロッテルダム大学の研究者とも情報交換を行い、また研究成果をコメンテーターとして公表する機会を得た。 松沼は、国際植民地研究所(Institute colonial international)の年次大会報告書を史料として用い、19世紀末から1920年代にかけて、植民地における混血児の存在が、諸植民地列強が共有する課題として国際的な学術交流の場で論じられた過程を検討した。そこでの主要な関心事は、混血児の「人種」的特徴が環境と教育に起因するものか生物学的遺伝によるものなのか、および彼らの存在が植民地支配体制を動揺させるのではないかということであったことが分かった。 上杉は、面接調査と英国公文書の閲覧、先行研究の検討を実施し、旧英領インド陸軍および英国陸軍における英国人将兵と現地人兵士の通婚規制についての情報を収集した。これらの情報にもとづいて、兵士の通婚規制による民族境界の維持が、英国の軍事戦略やグルカ兵内部の統制、生活戦略にとってもつ意味について検討した。その成果は論文や研究会等で発表した。 宮崎は、本研究の統括とともに、日本植民地期台湾の家族と婚姻、人種に関する法制や言説について、台湾の図書館を中心に収集した資料をもとに検討した。台湾の場合、欧米の植民地に比して、人種混濡を懸念する言論はあまり見られず、むしろそれを政策の一部で推奨している。また被支配者に対しては、日本語習得により「日本人らしく」することに政策的重点が置かれていた。このような特徴は日本の地政学的、歴史的固有性や住民登録制度(戸口)の存在によるものか、今後検討すべき課題が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は植民地における通婚と家族制度という大テーマを共有し、4名の共同研究で進めている。しかし、それぞれ異なる地域を研究対象としているため、先行研究の有無や課題設定のしかたにより、各人が目標とした進度の達成度については、計画以上に進展しているケースとそうでないケースとややばらつきがある。しかし平均すれば、おおむね順調に進犀していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は平成24年度で3年間の研究の最終年度を迎える。24年度はこれまで集積したデータを用いて学会発表や論文執筆を行う予定であり、特に研究遂行上の問題点や、変更すべき点はない。ただ、追加調査や国外での学会報告が必要な場合、24年度は本科研の予算が小さいため、残念ながらその旅費は各人で捻出することとなる。この研究チームは、植民地における「通婚」や民族の境界というテーマでこれまで通算6年間ともに研究をしてきたが、本研究終了後に前述のテーマにより、論文集または著書をまとめたいと希望している。しかし出版に関しては自費でまかなえる部分は少ないため、原稿ができた段階で出版助成金への応募を検討している。
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Research Products
(18 results)