2011 Fiscal Year Annual Research Report
女子美術大学コレクション「日本の染織品」の学際的調査に基づく意匠・素材・技法研究
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22520107
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Research Institution | Joshibi University of Art and Design |
Principal Investigator |
岡田 宣世 女子美術大学, 芸術学部, 教授 (70185445)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深津 裕子 女子美術大学, 芸術学部, 学芸員 (20443145)
須藤 良子 女子美術大学, 芸術学部, 学芸員 (20573190)
坂田 勝亮 女子美術大学, 芸術学部, 教授 (40205745)
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Keywords | 日本染織史 / 科学的分析 / 染織技法 / 小袖の意匠 |
Research Abstract |
本研究は、女子美術大学が平成20~21年度より所有することとなった染織コレクションのうち、奈良時代から江戸時代後期までの日本の染織品約900点を対象とし、染料や金属糸の組成分析、測色による分光分析結果などを加え、歴史的変遷を視野に入れつつ、各時代の染織品の意匠・素材・技法の特質を再検証することを目的とする。 本年度の実施内容 1.基礎調査結果を続けるとともに、類似作品・来歴等を調査し、比較を行った。 旧カネボウコレクションのうち、長尾コレクションに由来するものについての調査を行った。 他の日本の染織品と比較するため、沖縄の染織品の調査を行った。 2.文献・史料調査と作品調査結果を照合した。 3.選定した作品を対象に、素材の科学分析を行った。 ◎繊維分析;繊維の形状をマイクロスコープで観察し、素材の特徴を把握、画像を記録した。 日本の上代染織品55点のうち10点に関しては繊維試料を採取し、走査型電子顕微鏡を用いて側面形状と断面形状の画像記録と分析を行った。 ◎測色;分光測色計を用いて慶長小袖裂の地色を測色し、色を定量的に記録した。 ◎媒染剤および染料の分析;(1)染料分析試料に付着した媒染剤を蛍光X線分析装置で分析。 (2)同様の方法で、プルシャンブルーと推測した小袖裂を分析。 ◎染料分析;慶長小袖裂の黒と赤について、高速液体クロマトグラフで染料分析を行った。 ◎鳥の羽の分析;鳥の羽を用いた染織品について、羽毛の断片を分析し、鳥の種類を特定した。 4.小袖および小袖裂55点の調査結果を、文化遺産オンラインおよび女子美術大学のホームページで閲覧および検索できるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
江戸時代初期の慶長小袖裂の染料分析において、推測を裏付ける分析結果がでたことをはじめ、目視の調査においてプルシャンブルーを用いた染色の劣化から、染料の簡易判定の可能性が示唆されたこと、鳥の羽を用いた染織品の羽の分析などは(1)の研究達成度といえるが、染料分析においては、分析費用の関係から、桃山時代の小袖裂の分析が実現していないこと。金属糸の組成分析の意義を再検討するため、分析を次年度に変更したことなどから(2)を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
調査研究は、ほぼ順調に進行していることから、平成24年度も計画通りに推進する予定である。 日本の染織品の金属糸の分析を行った先行研究は少なく、本学コレクションに用いられている金属糸を採取する作品の選定(仕立てを解く必要性、織物糸から刺繍糸と幅が広いこと)に関わる問題点を検討した結果、さらに検討を要する課題であるとの結論を得た。したがって、分析する対象技法を絞って24年度に調査を行うこととした。
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Research Products
(7 results)