2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520157
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
明木 茂夫 中京大学, 国際教養学部, 教授 (10243867)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 肇子 東海学園大学, 人文学部, 教授 (20202319)
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Keywords | 張炎『詞源』 / 五声・七声 / 十二律呂 / 詞学 / 詞楽 / 宮調 / 中国古典楽理 / 中国古典音楽理論 |
Research Abstract |
南宋・張炎の『詞源』巻上は、当時隆盛した文人歌曲「詞」の楽理面(詞楽)の専著である。13世紀における音楽理論書たる本巻は、中国学のみならず音楽史においても貴重な資料であることは言うまでもないが、残念ながら我が国では未だ本格的な研究がなされているとは言い難い。本研究の目的は、中国古典文献の研究方法を基本とし、さらに音楽学の知見を踏まえつつ、『詞源』巻上の楽律論を解読することである。 詞楽で用いられる音階は、絶対音高たる十二律呂と、相対的音程を示す音階たる五声七声、という二つの柱からなっており、『詞源』巻上はその思想的意義、律学的算出方法、相生順や音程順による音階相互の関連などを図を交えつつ説明している。本研究ではその難解な音階論の述べるところを儒教思想・律学的計算・図の解釈・音符の解釈など、異なる角度から明らかにし、詳細な訳注を作成した。 さらにその研究結果に基づき、中国の学者による『詞源』の音階論に関する論衡を再検証し、従来定説とされてきた解釈に対して疑問を呈し、そこから、その条目一つにのみ目を置かず、『詞源』全体の論の流れに着目しつつ、そこに自然に位置づけられるべき新たな解釈を提示した。 また天下の孤本たる『詞源』の元代写本二種について調査し、他の諸本との文字異同を比較し、異同表を作成し、それを通じてこれら古写本の系統・価値などを考察した。 これら成果は、「張炎『詞源』巻上訳注稿(二)付異同表」と題する冊子としてまとめ、関連する研究者、全国の中国文学関係の学科を有する大学、音楽大学等に送付した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までに中国古典音階学の思想的・理念的基礎であるところの陰陽五行・天文暦法、及び律学的・數理的基礎であるところの三分損益生成という、最も難解な部分の訳注は完成した。当初の計画ではこれに加えてより音楽の実際面に係わる宮調・転調に係の条目も一部は訳注を作成する予定であったが、これは調査・検証のみ終わった段階である。残りの条目は互いに関連するものなので、最終年度で訳注としてまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究成果をふまえつつ、『詞源』楽律論の中心たる宮調論・転調論・音符(工尺譜)運用法に係わる残りの条目の訳注を完成させる。特に、思想や理念を離れて、より実際の音楽の創作や演奏に関連の深いこれら条目は、決して別個に独立してあるものではなく、互いに関連しつつ、内容的にも連続しつつ発展するように配置されている。訳注作成においても、それを十分考慮しつつ、各条目相互の関連がより立体的に明らかになるような訳注となるよう配慮する。また訳注作成を通じて明らかになった個別事項も別個に論文として発表する予定である。
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Research Products
(3 results)