2011 Fiscal Year Annual Research Report
『源氏物語』『枕草子』における本文の変遷とその受容に関する研究
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22520216
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
新美 哲彦 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (90390492)
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Keywords | 古代文学 / 源氏物語 / 定家 / 奥入 |
Research Abstract |
23年度は、『源氏物語』の初期注釈書である『奥入』を中心に研究を進めた。『奥入』は、定家作の『源氏物語』注釈書で、『源氏物語』の注釈書としてはごく初期のものであり、後世のさまざまな注釈書が引用することからも、その影響の大きさが伺える。 この『奥入』の諸本を池田亀鑑が整理し、現存する定家筆本および大島本、伝明融等筆本巻末付載勘物を「第一次奥入」、別冊にまとめられた自筆『奥入』その他を「第二次奥入」と整理して以降、『源氏物語』巻末付載勘物と別冊にまとめられた『奥入』の先後関係についての論は多い。 「定家『奥入』の諸問題」(『中世の学芸と注釈』竹林舎二〇一一・九)では、これら『奥入』諸本の問題点について以下のように整理・考察した。いわゆる「第一次奥入」・「第二次奥入」は、「第二次奥入」・「第一次奥入」の順で成立したこと、いわゆる「第一次奥入」の原態は、自筆本『奥入』とは直接重ならない別冊単行『奥入』と想定されること、巻末付載『奥入』は、巻によってさまざまな系統を有しており、一つの本文系統として認定することはできないこと、付け加えるに、大島本巻末付載『奥入』自体も一つの系統として認めるには躊躇されること、そして、巻末付載や別冊という形態と、『奥入』本文の分類は重ならないことを考察した。 さらに「別冊『奥入』諸本の整理と特徴」(『源氏物語の展望』第十輯二〇一一・九)において、別冊形態の『奥入』諸本を整理し、自筆本系(甲類・乙類)・内閣文庫本系・源語古鈔系に三分類し、それぞれの指標を詳しく述べた。 これらの基礎作業によって、『奥入』の変容過程の解明が今後さらに進むことが期待されよう。 また、前年度に引き続き、正宗敦夫収集善本叢書の刊行も手がけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、定家『奥入』についての研究を順調に進めていることによる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在、『源氏物語』注釈書が作成される際に底本として選定されることが多い大島本『源氏物語』付載『奥入』の整理を行う。次いで、『奥入』を付載している『源氏物語』写本の洗い出しを行い、さらに、それらの『奥入』がどのような系統の本文を有するかを調査する。その作業過程で、『奥入』がどのような形で流通していったかが知られるだろう。
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