2014 Fiscal Year Annual Research Report
小型版対訳古典テキストの普及と1580年代の英詩・英国演劇
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22520232
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
清水 徹郎 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 准教授 (60235653)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 古典文学受容 / 英国 / ルネサンス / マーロウ / ジョンソン / チャップマン / シェイクスピア / 印刷本 |
Outline of Annual Research Achievements |
西欧初期近代の古典文学テキスト流通の問題に関して、十六折判、八折判、四折判、二折判等の判型の違いが、購買する読者層の違いを反映するものであることが、これまでの調査であきらかになっている。紙が高価であったため、大学生を主たるマーケットに想定して、八折判、十六折判等の小型本に細かな活字で印刷する技術が急速に開発された。一方で二折判等の大型印刷本の流通は、古典研究を専門に行う者や裕福な読者層に限られた。つまり初期近代における古典文学の受容に関して、相異なる二系統の文化が併行して存在したものと推測される。平成26年度、本研究計画では1580年代から1610年代の間の英国詩人・劇作家におけるその受容の状況を考察した。クリストファー・マーロウが十六折判ギリシア詩のアンソロジーから影響を受けた可能性が高いことは前前年度までの本研究計画ですでに考察したところであるが、ウィリアム・シェイクスピア、ベン・ジョンソン、ジョージ・チャップマンにおける受容状況との比較検証をあらたに進めた。シェイクスピアとジョンソンの劇作品ではあきらかに小型本を持ち歩く類いのイメージが複数見られ、同時代の大学生を中心とする小型本文化としての古典文学受容の証言と解釈できる。本研究で調査した限り、チャップマンのテキストには小型普及本の文化を軽視するかのような主張の痕跡が見られるが、その真意は明らかでない。注釈つき大型印刷本の権威に依存すべき独自の理由がチャップマンにはあったのかとも推測できるが、さらに検証が必要である。ジョンソンが自作の出版時には二折判を用いたことを考えると、受容の現実では小型普及版が活用され、詩人が権威を主張する際に二折判豪華本に依存するという、両面的文化構造があったと推測できる。この研究成果は平成27年度中に学術論文として発表予定。
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Research Progress Status |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(2 results)