2011 Fiscal Year Annual Research Report
英国18世紀ピクチャレスクの森林描写における自然観
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22520245
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
今村 隆男 和歌山大学, 教育学部, 教授 (90193680)
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Keywords | 旅行記 / 庭園論 / 環境観 / 風景 / ピクチャレスク / 森林 / イギリス / コテージ |
Research Abstract |
平成23年度は、ツーリズムの流行を受けてピクチャレスク趣味が発展し、ツーリズム以外の他の様々な分野にも拡大していった1780年代の文献を考察する計画であった。予定していたのは、庭園論(William Mason他)のほか、農林業報告書、博物誌、風景詩などの文献であったが、このうち、庭園論、およびそれと関連した風景詩(文学)の文献分析に多くの時間をかけることになった。また、計画の中にはなかったが、大規模な風景式庭園との関連で、より小規模なコテージ・ガーデンについての文献も多くを考察できた。具体的には、Masonのほか、1780年代後半から活躍を始めたHumphry Reptonの庭園論、Reptonとの比較で、William Wordsworthの庭園に関わる風景詩("Home at Grasmere",Excursion)の一部、Nathaniel Kentの農業論、1780年代以降の様々なコテージ論やパターン・ブック、などである。また、これらの一次資料とともに、それについての近年の研究書も、多くを読むことができた。 研究内容としては、ピクチャレスク美学において表象性が復活した背景には、やはり政治的動向が強く影響していることが明らかになった点が重要であると思われる。研究手法としては、研究計画当初は時代区分に従って文献の検討を進めてゆくつもりであったが、同じテーマを取り扱った文献を時代の流れに沿って読み進めることの意義も認めることになり、両方の手法を併用するつもりである。博物誌関連の文献やWordsworth以外の風景詩、それから生物学の関連文献(Erasmus Darwinなど)には、研究を進める時間的余裕がなかったのが、反省点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記したように、あらかじめ計画した予定に沿って研究が進められているので、「おおむね順調」であると判断できる。上記の通り、研究の進展に応じて、時代区分、および考察の対象となる文献について若干の変更をすることになったが、これも計画段階で想定されたことである。ただ、研究対象が徐々に拡大されているので、今回の研究では最終的にどこまでを視野に入れてまとめるのかを決断する必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、当初の計画通り、1790年代のピクチャレスク関連の文献の分析を進めたい。平成25年度が研究の最終年度になるため、24年度中には第一次資料の読解は終えておきたいと考えている。研究対象をどこまでも拡大しようと思えば可能なテーマであるため、適切な範囲でとどめて何らかの結論を出すことが必要であるが、そのあたりについても見通しをたてたい。
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