2011 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカ系アメリカ文学と視覚芸術における奴隷制度の表象
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22520284
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
宮本 敬子 西南学院大学, 文学部, 教授 (60182044)
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Keywords | アフリカ系アメリカ文学 / Toni Morrison / 奴隷制度の表象 / 人種表象 / ジェンダー表象 / トラウマ表象 / 視覚芸術 / Kara Walker |
Research Abstract |
平成23年度は、以下のような研究実績および成果をあげることができた。 1)4月から7月にかけては、主としてOctavia Butler,Sherley Anne Williamsの文学テキストおよび関連文献を調査・精読した。2)6月にはオハイオ大学教授Amritjit Singh氏を招聘し、アフリカ系アメリカ人とアジア系アメリカ人の移住と市民権をめぐる講演会(英文学科主催)を開催した。この講演会は、アメリカの奴隷制度によるブラック・ディアスポラの経験が、アフリカ系アメリカ人のみならずマイノリティーの人々の共通体験として現代にまで続いてきたことを明らかにするもので、学科を超えて多数の出席者を得た。本研究のテーマである歴史的トラウマとしての奴隷制度の表象研究の現代的意義を確認する良い機会となった。3)8月から9月にかけては、平成22年度にパリで開催されたToni Morrison国際学会で発表したMorrisonとKara Walkerに関する英語論文の執筆と、掲載する画像の版権取得を行った。完成した論文は日本アメリカ学会の学会誌に投稿し受理された(2012年6月末出版予定)。4)10月にはグローバリゼーションと文学に関する批評書『世界文学史はいかにして可能か』(共訳)を出版した。これは、植民地主義による奴隷制度とアフリカ系アメリカ人の移住の問題が、現在のグローバリゼーションの問題とも深いかかわりがあることを確認する良い機会となった。5)また平成24年1月には、シアトルで開催された現代アメリカ言語学会(MLA)年次大会に参加し、関連テーマのセッションに出席すると同時に、書籍等の最新資料も入手することができた。MLA大会では、現代における奴隷制度表象の重要な小説『中間航路』の作家チャールズ・ジョンソン氏の講演を聞くという貴重な機会を得た。6)3月には1週間の日程でニュヨーク公立図書館ショーンバーグ分館にて関連資料を収集し、またアフリカ系アメリカ入の移住に関するノンフィクションで全米批評家賞を受賞したIsabel Wilkersonの講演会等に出席する貴重な機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画外ではあるが研究テーマに関連した翻訳の仕事に従事したこと、2012年6月末出版予定の英語論文に用いる画像の収集や版権取得等に時間と労力がかかったことなどが主な理由である。また、研究を進めるにつれて、取り扱う必要のある作家や芸術家が、当初想定していたよりもかなり幅広く存在していたことが明らかになり、資料収集等に十分な時間が取れなかったこと、視覚芸術関連の作品は所蔵図書館・美術館によっては容易に調査しがたいものもあること、さらにはアフリカ系アメリカ芸術関連の美術書等には入手困難なものもあることなどが理由としてあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
資料収集時間の不足を補い、論文としての一定の研究実績をあげるため、今年度は取り扱う作家・芸術家をかなり絞り込む予定である。より包括的・発展的な研究成果は来年度以降に発表していく。
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