2011 Fiscal Year Annual Research Report
近世辞書の学際的・社会史的研究のための調査と基礎情報の収集
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22520463
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
佐藤 貴裕 岐阜大学, 教育学部, 教授 (00196247)
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Keywords | 日本語史 / 辞書史 / 言語生活史 |
Research Abstract |
当初計画の第一にかかげた、近世辞書諸本の書誌情報の収集は、福岡県立図書館・福岡市立中央図書館・千葉県立文書館・千葉県立図書館・埼玉県立文書館・小松市立博物館・小松市立図書館・富山市立図書館・国文学研究資料館にておこなった(本研究計画研究費の以外の資金によるものも含む)。特徴的な知見を挙げれば、これらの図書館等ではいずれも19世紀の大型本節用集を所蔵するため、各種の比較検討をおこなうことができ、その改修実態・利用様態の一端を知ることができた。 ・『倭節用集悉改嚢』1818年刊本は、巻頭付録に一部版木を削除したと推測される部分があるが、小松市博本の2本がともに削除のない本であったことから、この削除はすでに販売段階にはいったなかでの改修であることが確認できた。さらに小松市博本2本間でも記事に異同が確認されたので、都合少なくとも3種の異本の存することが知られた。 ・『永代節用無尽蔵』1831年版でも一部記事の異同が認められた。 ・小松市立図書館蔵『倭節用集悉改大全』には、当該本の貸出先名簿が付されており、利用層が推測された(ただし近代のもの)。 また、近世辞書資料そのものの収集もおこなうことができた。早引節用集B類の嚆矢である『〔増字百倍〕早引節用集』1760年版、17世紀の主流であった本文・体裁をもつ『豊栄節用世宝蔵』の1823年求版といった節用集史上興味深いもののほか節用集15本、漢字字典5本、以呂波韻1本、四書五経字引6本、その他関係書5本など、計32本を収集しえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
書誌的事項のデータの蓄積が着々と進んでおり、新たな知見がも得られている。近世辞書の購入も特徴的な本を含むものであって、今後の研究に寄与するところが少なくないと予想される。以上、基礎的事実・事項の蓄積をめざす本研究にあっては順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでどおり、各地図書館および文書館(公文書館・歴史資料館などを含む)での調査を着実にこなしていくことが何より実のある成果に直結すると考えられる。ことに文書館の多くは、古典資料の所在を網羅的に把握しようとしている国文学研究資料館の事業においても重視されておらず、その全貌の把握が困難な状況にある。それだけに、今後は、地方の文書館での調査に優先的に注力していきたい。
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Research Products
(3 results)