2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22520476
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
坂本 清恵 日本女子大学, 文学部, 教授 (50169588)
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Keywords | 定家仮名遣い / アクセント体系変化 / アクセント仮名遣い / 「仙源抄」 / 長慶天皇 / 耕雲 / 「仮名文字遣」 / 「下官集」 |
Research Abstract |
「定家仮名遣い」の書として伝播する『仮名文字遣』の実態と、「定家仮名遣い」の批判の書とされながらも、アクセントによる仮名遣いを実行したと思われる『仙源抄』などの注釈書の典拠を考察した。これまで具体的な研究がなされてこなかったアクセント体系変化後の「定家仮名遣い」の実態を明らかにし、アクセント資料としての可能性を探るとともに、アクセントに拠ることのない「定家仮名遣い」がどのように構築され、浸透していくのかの解明を目的として研究を進めた。 『仙源抄』の声点については、金沢市立図書館、天理図書館、宮内庁書陵部本などの諸本調査を行った。参考にしたとされる『河海抄』『紫明抄』の声点調査も行い、比較検討を進めて、差声と移声の別などを分析した。さらに『仙源抄』の書写者である耕雲自筆資料についてその仮名遣いの実態を明らかにすることができた。アクセント体系変化後に生育した耕雲は、書写にあたっては親本に忠実であった。『仙源抄』では、アクセント体系変化後のアクセントに準拠した長慶天皇自身の仮名遣いに従い、『原中最秘抄』では、アクセント体系変化前のアクセントに準拠した仮名遣いとなっている。さらに自著では、『原中最秘抄』の事例と同様の仮名遣いがとられていることが分かった。つまり、耕雲の習得した仮名遣いは、アクセントに拠るものではなく、『源氏物語』の書写などによって触れた文献に準拠する仮名遣いなのであった。それは『仮名文字遣』に近いものなのである。それは、定家や源親行時代のアクセントに準拠したものに近く、体系変化後のものも混在している。アクセント体系変化後の定家仮名遣いは、特殊な場合を除き『仮名文字遣』も含めて、アクセントによらず、文献典拠によるものであることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
震災の影響により文庫調査が遅れたところはあるが、声点、仮名遣いのデータ化や分析についてはほぼ計画どおりに進んでいる。予定していなかった耕雲自筆資料を調査することによって、アクセント体系変化後の書写の実態も明らかになってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
『仮名文字遣』を含め、アクセント体系変化後の定家仮名遣いに影響を与えているのは「源氏物語」の本文やその注釈書である。そこには声点も差されていることが多いので、声点を含めて、仮名遣いがどう伝承されたのかを探る。声点がみられる『長珊聞書』などを新たに分析対象として加え、研究を進めていきたい。
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Research Products
(3 results)