2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520476
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
坂本 清恵 日本女子大学, 文学部, 教授 (50169588)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 定家仮名遣い / 『仙源抄』 / 『仮名文字遣』 / アクセント体系変化 / アクセント仮名遣い / 長慶天皇 / 耕雲 / 行阿 |
Research Abstract |
これまで大野晋氏の研究により、行阿の『仮名文字遣』が定家の仮名遣いとは異なるのは、アクセント体系変化の遅速を反映したためいう解釈が定説となっていた。LLL>HHLの変化が早く、LLH>HLLの変化が遅かったというものである。しかし、これには「おとこ・おほぢ・おほひ」のように使用頻度の高い語LLLである語を除外している点、LLHを保つ語が動詞に限られているという点が見逃されてきた。LLHを保っているように見える「お」で書かれる動詞は型の種類が少なく、アクセント変化後も区別がつけられる。さらに、行阿の生育地が鎌倉であると考えられること、筆者が行ってきた『仮名文字遣』の諸本研究により、『仮名文字遣』の仮名遣いは行阿自身のアクセントに拠ったものではなく、『仮名文字遣』をまとめたときから文献による仮名遣いであることを明らかにした。 また、長慶天皇の『仙源抄』はその跋文によりアクセントによる定家仮名遣いを批判したものとして扱われてきたが、長慶天皇は『仙源抄』本文執筆にあたり、アクセント体系変化を経た自分自身のアクセントにより「を・お」を書き分けるという「定家仮名遣い」の原理に拠っていることを解明した。さらに『仙源抄』を書写した耕雲自筆本の調査により、自著では自身のアクセントにより書き分けをすることはなく、当時通行の定家仮名遣いに拠っていたことを明らかにした。 つまりアクセント体系変化後においては、「お」「を」の仮名遣いは、当時通行となっていたいわゆる「定家仮名遣い」を用いるものであって、それは定家の頃、親行の頃にアクセントを基準として使用されていた仮名遣いを継承したものであり、自らのアクセントによって新たな書き分けを行うことは稀であるといえよう。アクセントによって「お」「を」を書き分けるという定家仮名遣いの原理自体は伝わっていたが、実践した人はごくわずかであったということである。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(3 results)