Research Abstract |
日本語教育における教師支援として,文法項目が容易に検索できるデータベースを構築し,広く公開することを目的とする。本年度は,(1)文法項目表を確定し,(2)コーパスから用例を抽出しデータベースを拡充し,(3)すべての文法項目に対して,主観判定による6段階の難易度レベル付けを行い,(4)文法項目表をもとに,6段階レベル付けを付した文解析システムを構築し,(5)同様にwebを使って日本語教育に貢献しようとする研究者,研究成果との協同を図るべくシンポジウムを開き,ひろく日本語教育関係者などと共有した。以下に詳細する。 (1)文法項目表は,前年度作成した文法表に初級項目と上級項目を加え,全体で1884項目として,文法項目を網羅的にカバーするものとした。初級項目には『日本語能力試験出題基準【改訂版】』に示された動詞・形容詞の活用形等を加えた。上級項目には,『日本語文型辞典』の中から採用していない項目を加えた。(2)用例抽出をさらに進め,文法研究にも応用した。(3)主観判定は,7名の日本語教育関係者を対象に,CEFR(ヨーロッパ参照枠)と同じく6段階の難易度を判定してもらう調査を行った。その結果,一致度の高い5名の結果を採用し、平均値を当てはめレベル付けを行った。(4)(1)の文法項目に意味用法,旧能力試験級,(3)の6段階レベル,典型的な用例を付した文解析システムを構築した。次年度初めには一般公開予定である。(5)平成24年3月3日にシンポジウム「webでつながる日本語教育」を開催した。登壇者は,『中納言』について山崎誠氏,「日本語学習者作文コーパス」について李在鎬氏,『リーディング・チュウ太』に関連して川村よし子氏,「日本語学習辞書科研」について砂川有里子氏,本研究文法項目表について堀恵子,本研究を用いた文法研究について江田すみれ氏である。「日本語学習辞書科研」には文法表を提供した。今後も,これらの研究との連携を図っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
文法項目表を完成し,項目の難易度を主観判定によってレベル付けし,文解析システムを構築した。また,他の研究とも連携しつつある。これらのことは、当初の計画を超えるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)文解析システムを用いて、例文抽出をさらに進め,データベースを充実させる。用例文は順次web上にアップする予定である。(2)文法項目に付与した6段階の難易度について,今後検証する必要がある。3つの方向性を考えているが,1つは日本語教科書に現れる文法項目をコーパスから調査し,教科書の対照としている学習者と6段階のレベルの一致度を検討する。2つめとして,学習者の産出について,CEFRを用いて口頭表現を評価している研究者と共同して,学習者の能力評価と文法項目の使用の関係を検証する。最後に,学習者の受容能力に関して,読解教材を文解析システムを用いて文法項目の使用を調査し,一致度を見る。(2)のため,今年度はヨーロッパと中国の研究者と共同でパネルディスカッションを計画しており,今後の研究のあり方について探っていく。
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