2012 Fiscal Year Annual Research Report
英語語用論的能力の教授法開発―発達モデルの検証と教授効果の測定から
Project/Area Number |
22520565
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大和 知史 神戸大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80370005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田頭 憲二 広島大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (00403519)
磯田 貴道 立命館大学, 文学部, 准教授 (70397909)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 語用論的能力 / 学習者要因 / 動機づけ |
Research Abstract |
本研究の目的は,「日本人英語学習者の語用論的能力を発達させるために,有効な教授法はどのようなものか」を研究テーマとして,学習者の語用論的能力の発達過程をより詳細に記述をした上で,語用論的能力の指導モデルを構築し,各発達段階に有効な教授法を明らかにすることである。具体的には,1)現在までの教授効果研究のメタ分析に基づき,語用論的能力の発達段階を明確化させ,2)発達段階に基づいた語用論的能力に対する教授法の提案を行うことにより,教育実践への示唆を求めたい。 これまで,動機づけ要因が語用論的意識に及ぼす影響を,アンケート調査を基に考察した。その結果,より自律的である学習者ほど,語用論的誤りへの気づき度が高いことが明らかとなった。換言すれば,より自律的である学習者ほど,形式へのnoticingから,語用論的内容を含めたunderstandingへの意識の移行(Schmidt, 1995)がなされていることが示唆された(田頭・大和・磯田, 2011)。また,習熟度を要素の一つに加えた調査では,同様の傾向が見られたことに加え,必ずしも習熟度が高い方が,語用論的意識が高い訳ではないことが明らかとなった(大和・田頭・磯田, in press)。これらの結果を受け,平成24年度においては,語用論的能力の発達過程の明確化の一環として,語用論的意識の知覚面だけではなく,産出面において検討することとし,依頼表現のうちどのような表現を用いるのが最も典型的であるのかについてパイロット調査を行った。その結果,より自律的である学習者ほど,産出面においても状況に配慮した語用言語的形式を用いることが明らかとなった(磯田・田頭・大和, 2012)。次年度は,先の産出面のパイロット調査に習熟度を考慮した形で拡充した上で,これまでの調査の結果をまとめ,学習者要因に配慮した語用論的能力の指導への示唆を探ることとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の目的として,1)学習者の語用論的能力の発達過程をより詳細に記述をした上で,2)語用論的能力の指導モデルを構築し,3)各発達段階に有効な教授法を明らかにする,という各段階をクリアすることを設定していた。しかしながら,上記実績の概要にある通り,学習者の語用論的能力の発達過程に影響を及ぼすと考えられる学習者要因の一つである動機づけ要因についての調査について,当初の予想よりも重要なものであるという認識にいたった。それに伴い,語用論的意識を知覚・産出の両面から見ることで,より詳細な語用論的能力の記述に接近することができると考え,調査研究を進めている。最終的には,それらの記述をもとにして,学習者要因に配慮した語用論的能力の指導に対する示唆を求めることから,最終的な目的として設定していた,「日本人英語学習者に対する語用論的能力の指導モデルの構築と,教育実践への示唆」については最終年度に向けて達成することができるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記概要およびこれまでの達成度に記しているが,ここまで,動機づけ要因が語用論的意識に及ぼす影響を,アンケート調査を基に考察している。その結果,より自律的である学習者ほど,語用論的誤りへの気づき度が高いことが明らかとなった。また,習熟度を要素の一つに加えた調査では,必ずしも習熟度が高い方が,語用論的意識が高い訳ではないことが明らかとなっている。これらの結果を受け,平成24年度においては,語用論的能力の発達過程の明確化の一環として,語用論的意識の産出面において検討することとし,依頼表現の典型性についてパイロット調査を行った。その結果,より自律的である学習者ほど,産出面においても状況に配慮した語用言語的形式を用いることが分かった。平成25年度は,先の産出面のパイロット調査に習熟度を十分に考慮した形で拡充した上で,学習者の語用論的能力の記述を行い,それをもとにした学習者要因に配慮した語用論的能力の指導への示唆を探ることとする。
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Research Products
(1 results)