Research Abstract |
本年度は,特に以下の2点に絞って調査を行った。 1.問題項目に対する自信度と得点との関係 語彙サイズテストの実施直前に「自信あり」「自信なし」「知らない」の3つの選択肢を設定して,学生にあらかじめ自己申告させた上で,語彙サイズテストを実施した。語彙サイズが大きい学生は小さい学生に比べて,「自信あり」で正答が多いことが明らかになった。しかも,語彙サイズによっては,得点が約2倍程度にも及んだ。 その一方で,「自信あり」と答えながら解答が誤っていたケースは,どのグループでも全体の1割程度の項目で見られた。その原因として,学生が単語を勘違いしたか見間違えていたこと,知っていると思った意味が選択肢になかったことなどが考えられる。今後は,自信を持って選んだのに誤答となったプロセスを解明する必要があるだろう。 2.問題項目に対する自信度と得点との矛盾 どの頻度レベルでも,自信がないにもかかわらず,推測で回答して得点した問題項目数が,全体の1/5に相当する50題前後あった。しかも,語彙サイズによる違いは,ほとんど見られなかった。選択式の語彙テストの場合は,明確に意味を知らなくても,何となく選んで得点できる項目が一定数存在することが明らかになった。 この得点についての解釈が2通り考えられる。まず,語彙知識は,部分的な知識が積み重なって知識を深めていくものであり,正解できた単語はその発達過程であると考えることができる。もう1つは,選択肢の問題での解答技術の問題である。テスとされている語の意味がわからなくても,選択肢を消去法で消していけば,最後に正答が残る可能性もある。実際に,その単語を知らなくても,他の語の意味がわかっていれば,正解できてしまうことがあるかもしれない。語彙サイズの算出に自信度を加える方法(Iso & Aizawa, 2010)は,この問題を解決するものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
読解力と語彙力の関係についての調査は,昨年度以来順調に進んでいる。しかし,読解力の得点と設問形式に関する調査が進んでいない。今年度,改めて調査を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究調査の実施計画は,過去2年間,研究分担者が独自に行ってきた。今年度は,それらの研究をまとめ,研究代表者が調査結果を取捨選択して,最終的にプロジェクトの研究報告書をまとめることとする。
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