2011 Fiscal Year Annual Research Report
金属成分の影響による劣化絵図面類の保存に関する研究
Project/Area Number |
22520705
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Research Institution | (財)元興寺文化財研究所 |
Principal Investigator |
近藤 正子 (金山 正子) 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (20311491)
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Keywords | 日本史 / 絵画図 / 顔料の劣化 / 金属成分 / 劣化抑制 / 緑青焼け / インク焼け |
Research Abstract |
近世の絵図面や近現代の設計図面類や錦絵には、緑青の銅成分による緑青焼けや水銀を含む朱墨の黒ずみ、没食子インクの鉄成分によるインク焼け(インク・コロージオン)など、保管しておくだけでは経年劣化が進み支持体である紙そのものに腐食劣化が進行してくるものが多くある。これらは顔料や記録素材に含まれる金属成分の酸化による腐食現象である。本研究では、近世後期から明治以降の図面資料に使われている顔料や記録素材の伝播や開発の歴史的経緯を検証するとともに、その劣化のメカニズムを解明し、劣化を予防する方法、またすでに劣化している資料の強化処置方法について研究を進め、その安全な実用化を図ることを目的とする。 平成23年度では、平22年度に引き続き、絵図面、設計図面、錦絵等の劣化損傷状態および素材調査を行い、緑青の茶変色や朱墨の黒化、緑色水彩画の茶変色、ベンガラの茶変色、没食子インクの茶変色などの劣化の傾向を確認した。これらの劣化の傾向には、顔料そのものの劣化だけでなく、下地となる紙の種類によっても劣化の度合いが変化しているようである。また、紙の加工、たとえばにじみ止めの成分などとの相互影響も検討する必要がでている。とくに銅成分の劣化による緑青焼けと鉄成分の劣化によるインク焼けについては、過去の修復による加水の影響による劣化の促進も傾向としては把握できたので、今後分析を進める予定である。 今年度はとくに彩色顔料に使用されている金属成分の劣化現象をデータとして把握するためにサンプルを作成しての劣化試験を進行中であり、実験は来年度に引き続き行い、結果をまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
劣化促進実験に予定以上に時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
彩色顔料の劣化資料の実地観察を重ねてきたので、今後は劣化サンプルの分析と抑制実験を進め、具体的な劣化抑制の方法を検討したい。
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