2013 Fiscal Year Annual Research Report
西欧中世における手写本テクストの受容・生成プロセスに関する比較史的研究
Project/Area Number |
22520752
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岩波 敦子 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (60286648)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 中世ヨーロッパ / 教育 / 写本 / 翻訳運動 / 12世紀ルネサンス / 学問 / 文献学 / 自然科学知 |
Research Abstract |
本研究課題の最終年度に当たる平成25年度は、紀元千年紀イスラーム世界から中世ヨーロッパ世界へと伝播した天体観測儀アストロラーベに関する論稿を写本の比較分析から検討した平成23年度、ヨーロッパ中世のアバクス計算法の系譜を考察した平成24年度に引き続き、自然科学知に関する文献を個別に比較検討した上で、これまでの研究成果の総括を準備した。平成25年度の考察対象は、エウクレイデスの『原論』、アル=フワリズミーの『算術論(10進法計算法)』と『代数論』、プトレマイオスの『アルマゲスト』、そして『視覚/光学論』に関する自然科学文献である。近代科学へと繋がるこれら重要な自然科学文献がいつ、誰によってアラビア語(あるいはギリシア語)文献から翻訳され中世ラテン世界に伝播したのか、その伝播状況を個別に比較分析することによって、キリスト教信仰に依拠していた中世ラテン世界が、イスラーム世界という異文化からの知の受容に積極的だった事実を、実証的に明らかにした。さらにロバート・グロステスト(ca. 1168-1253)、ロジャー・ベイコン(1213/14-1291/92)という二人の学識者を取り上げ、各々入手可能だった最新の翻訳文献の制約を受けつつ、自然観察に基づく自然学から経験に基づく自然科学へと徐々に変容していく過程を、とりわけ「視覚」に関する学識において跡付た。これら研究成果の一部は、平成26年3月に刊行された論文集に発表している。 本課題研究により明示されたのは、中世ラテン世界への学識の仲介者としてのアラビア語文献の意義である。従来の研究において、天文学知の継承を中心にアラビア語翻訳の重要性が指摘されてきたが、学知の継承をより広域的文化圏、すなわちギリシア―イスラーム―ラテンという環地中海世界ネットワークで捉える必要性を文献学の手法から検証した。
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Current Status of Research Progress |
Reason
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(2 results)