2011 Fiscal Year Annual Research Report
「ユーロ-イスラム」の創出は可能か:ヨーロッパにおける新しい公共圏創造の試み
Project/Area Number |
22530142
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
中谷 真憲 京都産業大学, 法学部, 准教授 (60340436)
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Keywords | 政治学 / 移民政策 |
Research Abstract |
研究実施計画に基づき、H23年度は文献資料による移民のアイデンティティ研究、およびフランスにおけるイスラム・コミュニティの実地調査を行った。前者は、サルコジ政権の元でのフランスのアイデンティティ論争の経緯を分析する形で進めてきた。後者については8月に行ったものである。 その現地調査だが、これまでのフランス・ムスリムの研究においては、ほとんど注目されてこなかったフランス西部地塚(ノルマンディーからブルターニュ、アキテーヌ地方)に焦点をあてた。フランス西部はこれまでイスラム系移民の比較的に少ない地方であったが、近年、移民の流入がこの地域においても増加し、イスラム教徒に対する嫌がらせが頻発するなど、社会問題化している。こうした点に注目し、その実態を調査するため、カンペールのモスク、ナントのモスクなどにおいて、イスラム団体事務局長、およびイマームへのインタビューを行った。また特にナントのモスクにおいては、通常異教徒には認められない礼拝の儀式にも参列を認められ、イマームのコミュニティ住民への説法の実例を調査することが出来た。 また関連して、大戦の記憶の問い直しの過程で、対米関係および北アフリカ出身兵(アルジェリアなどイスラム系)をめぐる議論が巻き起こっていることにも着目しくこうした人々をどう追悼しているかについても、現地(ノルマンディの兵士墓地)に赴いて視察をしてきた。 こうした現地調査の過程では、ツールーズ大学、警察研究センターのバイル教授を訪ね、移民問題と警察活動について長時間にわたる意見交換もおこなっている。これらの調査結果をまとめつつ、今年度は論文にまとめていく予定である。 H24年3月末には、共編者として『覇権以後の世界秩序』(ミネルヴァ書房)を出版し、移民論と関わる形で考えてきたEUのアイデンティティについて論じている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地調査については、異教徒が普段立ち入ることのできない領域にまで入り、イマームにもインタビューできるなど大きな成果があった。他方、文献資料の分析についてはむしろ遅れており、これは学内業務があまりに多忙になったためであるが、悔やまれるところである。こちらは当初予定していた主要文献のうち6割程度の分析にとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、まず文献の分析、理論的積み上げの部分が弱くなっているので、これらに時間をとり、まずは世界問題研究所(京都産業大学)での報告、意見交換などを計画的に組み込んで、補強していきたい。中間報告としての論文がH23年度は書けなかったことがあり、今年度は年度内にスケッチ的な論考を一度書いて、それをもとに完成度を高めたいと思う。
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