2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530154
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
藤井 篤 香川大学, 法学部, 教授 (90222257)
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Keywords | 冷戦 / 脱植民地化 / アルジェリア戦争 / フランス / アメリカ |
Research Abstract |
冷戦と脱植民地化の関連・交錯の実際を、アルジェリア戦争を事例として事実実証的に追求してきた。宗主国フランスはこの紛争を国内問題として国際化を避けようと努める一方で、この紛争を国際化させようとするアルジェリアの民族解放勢力の戦略に対抗するためにも、国際世論に対してアルジェリア領有の正当性を訴える外交戦略を精力的に展開した。その際にフランスは民族解放運動が共産主義に操作された運動だという反共のレトリックを用いた。 フランスにとって最重要であったのはNATO同盟国アメリカからの対仏支持の確保である。しかしアメリカは北アフリカ世界における民族主義勢力が共産主義とはほとんど無縁であることを知っていた。アメリカにとって、NATO維持のためにはフランスの立場を支持しなければならないが、過度にフランスを支持すれば、アメリカは中東世界の民族主義勢力から植民地主義への加担者として非難され、彼らをソ連圏へ接近させる危険があった。アメリカ国務省内にはフランス支持の立場に立つ西欧課と、新興ナショナリズムに一定の理解を示す中東局という異なる部局があった。アルジェリア問題へのアメリカの対応はこの異なる路線の複合として、微妙に揺れ動いた。アメリカはフランスを同盟国として支持しながら、同時に民族解放勢力とも接触を続けており、アルジェリア問題への「リベラルな解決」を模索していた。こうした両方に「よい顔」をしようとする政策はフランスからは不信を買い、1950年代後半の仏米関係に強い緊張・対立をもたらし、アメリカは対応に苦慮することになった。以上のことを米国国立公文書館、アイゼンハワー図書館などでの一時史料調査によって実地に確認することができた。
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Research Products
(2 results)