2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22530154
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
藤井 篤 香川大学, 法学部, 教授 (90222257)
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Keywords | 脱植民地化 / 冷戦 / アルジェリア / フランス |
Research Abstract |
2011年度には、これまで遂行してきた国際関係史上の史料により得られた知見を、フランスの内政史的研究と結びつけ、内政と外交のリンケージを明らかにすることに努めた。そのために8-9月に、フランス・パリに出張し、史料調査を行った。フランス国家文書館では、国民議会の外交委員会および内務委員会の議事録、政治家の私文書などを閲覧した。国防省陸軍史料館ではエリー参謀総長文書などを閲読した。さらに社会主義研究大学局、ドゴール財団、パリ政治学院史料部で、社会党、ドゴール派などの政党政治家の私文書や証言を閲覧した。これらの一次史料の探索を通じて、フランス第四共和政末期の政党政治がアルジェリア問題を最大の争点として、危機を迎えていく様相が一層よく理解できた。同時にNATO同盟国であるアメリカがフランスを十分に支持していないことに対する不満や不信、さらにそうした事態に対して無力なフランス政府の「弱腰」に対する反感が、アルジェリア維持に固執する政治家や軍部首脳の間で強まっていたことが明らかになった。 従来のフランス人の研究ではアルジェリア問題をめぐる対外関係上の危機が無視される一方、主として英語圏の研究者たちによる国際関係史的研究は、フランス内政に関する史料の探索に十分ではなかった。フランス政府によるアルジェリア問題の解決不能が、フランスの政党政治の危機を先鋭化させていくのと同時に、仏米関係を悪化させ、さらにそれがフランス政治にリベウンドし、内政と外交の二重の危機の昂進がフランスの政治体制を崩壊に導いたことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
大学の記念論文集に掲載する別のテーマでの論文原稿の執筆を優先せざるを得ない事情があったため、本研究課題に直接関わる論文の執筆が遅れて公刊できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年10月には日本国際政治学会研究大会で部会「脱植民地化・冷戦・同盟」において報告することが内定しており、同じ部会の他の報告者・討論者たちと一緒に事前準備の研究会を夏に開催する予定である。アメリカ国務省のアルジェリア戦争認識を中心に据えた仏米関係について、またアルジェリア死守派右翼のプジャード派について、各々論文を公刊する予定である。夏には私費でフランス出張し、史料調査を行う予定である。
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