2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530175
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松村 敏弘 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (70263324)
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Keywords | relative performance / competitiveness / timing game / collusion / Hotelling / R&D / spatial Cournot / price leadership |
Research Abstract |
各企業が自社の利潤ではなくライバルの利潤も考慮した相対利潤を最大化すると仮定する相対利潤アプローチの特徴、既存のアプローチとの関係、潜在的な可能性等を整理し、更に現時点までに何が解明され、何が解明されていないかを、研究開発、企業の立地戦略、民営化政策、競争政策の文脈でまとめた。これを日本経済学会秋季大会の特別報告セッションで「相対利潤アプローチが拓く新しい産業組織」の題目で報告した。 並行して個々の具体的な問題に取り組んだ。まず相対利潤最大化アプローチと交渉ゲームとの関係を研究し、Friedman and Thisse(1993, RAND Journal of Economics)のlocation-collusion modelと相対利潤最大化モデルにおけるlocation-competition modelが理論的によく似た性質を持つことを発見した。この成果をまとめた最初の論文がGames and Economic Behaviorに掲載された。 この研究によって企業の費用構造の非対称性が重要な影響を与えることが明らかになった。これを踏まえて、費用の非対称性を取り入れ、研究開発投資と市場の競争度の関係を標準的な戦略的R&D投資競争モデルを用いて分析した。この結果、競争の激化は価格を下げ消費者の利益になり、更に元々競争優位にあった大企業の研究開発を活発化させ、結果的にこの企業の利潤を増加させる可能性があることを明らかにした。この事実は、即席麺市場での日清の行動のような、競争優位な企業が進んで市場の門戸を開き競争を促す行動をうまく説明できる。この成果の一部がJournal of Industrial Economicsに掲載された。 またタイミングゲームと相対利潤アプローチの関係を分析するために、タイミングゲームに関する基礎的な分析を行った。この成果の一部がOperations Research Letters及びJournal of Economicsに掲載された。同様にspatial modelの基礎的な分析の成果の一部がPapers in Regional ScienceとAnnals of Regional Scienceに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
この研究は2010年から始まったプロジェクトだが、過去2年間でWeb of Science(Social Science Citation Index)所収の雑誌に既に13本の論文(2011年度は6本)を発表するなど順調に研究成果はあがり、それを公表している。また中間的な総括とも言える報告を日本経済学会で行い、更にそれを出発点として順調に新しい論文にも取りかかり、投稿を続けており、継続的な成果をあげる地ならしも十分に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
過去2年間の研究で、産業組織の分野で広く知られた結果に関して、企業間の格差が大きな影響を与えることが明らかになってきた。そこで、相対利潤アプローチを適用するに先だって、ベンチマークとなる研究開発などの問題も企業間の格差がもたらす性質を明らかにしなければならないことがわかった。来年度以降この問題に更に積極的に取り組む。 これとは逆に、相対利潤アプローチを適用する予定だった混合寡占の分析に関して、この分野では当然のように仮定される非対称的な目的関数というモデル設定が結果に大きく影響を与える可能性が明らかになった。この問題を真摯にとらえ、混合寡占の分野で今まで当然とされてきた過程に結果が強く依存していないかを再確認し、それを踏まえた上で相対利潤アプローチを適用していく方策を追求する。 また研究成果の公表が国際的な情報発信を意識して英文論文に偏っている現状を鑑み、今後は日本語による情報発信も考慮していくつもりである。
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Research Products
(8 results)