2011 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル経済下における階層的政策競争の経済学的考察
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22530228
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
阿部 顕三 大阪大学, 経済学研究科, 理事・副学長 (00175902)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 泰裕 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (30332703)
山本 和博 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (10362633)
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Keywords | 天然資源 / 非対称地域の租税競争 / 関税競争 / 取引費用 / 経済成長 / 集積 |
Research Abstract |
本年度は、主要な研究成果は以下の2つである。いずれも国際的資本移動が存在するもとで、政策競争が資源配分や経済厚生に及ぼす影響を理論的に分析している。 第1に、天然資源の偏在が資本移動にどのような影響を及ぼすか、また、その資本移動に対して、資源の無い国とある国の政府がどのように反応するかを、租税競争の枠組みを用いて分析した。分析に際しては、局地的にしか利用できない資源を用いて生産される中間投入財と、資源の有無のみ異なる二国を想定した。その結果、資本は、資源の無い国からある国へと移動する誘因があり、そうした資本移動は、二国合わせた生産効率を改善するものの、効率性改善の便益は資本輸出国である資源の無い国に帰着し、資源のある国は厚生の損失を被ることが明らかになった。それに対して、政府が資本課税/補助金を課すことができれば、資本課税を通じて資源のある国は資本移動の便益の一部を取り戻すことができるが、資本課税は生産効率を損ねてしまう側面があることも分かった。 第2に、2国間での企業の誘致政策競争と経済成長の関係に関する研究を行った。多国籍企業の外国生産に取引費用が発生する場合、外国政府は取引費用を引き下げることか、もしくは関税の引き上げによって多国籍企業の誘致を行う。取引費用の引き下げ競争は結果として多国籍企業の本国から外国への流出を招き、経済成長率を低下させるが、関税の引き上げによる多国籍企業の誘致競争は、本国への企業の集積を促し、結果として経済成長率を上昇させることが分かった。経済厚生は、経済成長率に大きく依存し、経済成長率が上昇する場合に経済厚生も改善する。したがって、関税競争は経済厚生を改善させるが、取引費用の引き上げ競争は経済厚生を低下させることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主要な目的の一つは、国際的な資本移動(あるいは企業の移動)が存在する世界経済において政策競争が資源配分、集積、経済成長、および経済厚生などに及ぼす影響を分析することであったが、この課題に対する分析が大きく進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、国際間の政策競争だけでなく、国内の地域間の政策競争も同時に含めた形でそれらが資源配分、集積、経済成長、および経済厚生などに及ぼす影響を分析する予定である。これまでの研究成果を踏まえつつ、それをさらに拡張する方向で分析を行う予定である。平成24年度は、本研究の最終年度になるので、研究成果の取りまとめも行う。
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Research Products
(7 results)