2011 Fiscal Year Annual Research Report
損害保険における価格規制と競争に関する研究-保険料率規制緩和の影響を中心として-
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22530467
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
諏澤 吉彦 京都産業大学, 経営学部, 准教授 (50460663)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米山 高生 一橋大学, 大学院・商学研究科, 教授 (00175019)
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Keywords | 自賠責保険 / 地震保険 / 基準料率制度 / 市場均衡モデル / インセンティブ / 保険の入手可能性 / 逆選択 |
Research Abstract |
平成23年度においては、損害保険種目のなかで規制緩和後も基準料率制度のもと事実上の統一料率が維持されている自動車損害賠償責任保険(以下、自賠責保険という)および地震保険に焦点を当てて、その制度の特性を計量的に分析したうえで、基準料率制度の存続が、保険会社の行動にどのような影響を及ぼすのかについて検討を行った。その結果、自賠責保険については規制緩和後も、より規模が大きく経営効率のよい保険会社に対して、より強い契約引受けへのインセンディブを与えている可能性が高く、基準料率制度が同保険の安定供給に貢献し得ることがわかった。いっぽうで地震保険については、同様の傾向は観測されなかった。 以上の計量分析の結果を踏まえて、自賠責・地震保険の各種目について、より詳細な分析を進めた。まず、自賠責保険に関しては、一定のリスク細分化が許容される任意自動車保険とともに二層構造をもつわが国の自動車保険システムの有効性を、市場均衡モデルを用いて分析し、リスク水準に関わらず内部補助を許容したプール保険料の適正価格線と、低リスク者の無差別曲線との接点において自賠責保険が供給され、それを超えた領域においてリスク細分化を伴った分離保険料で任意自動車保険が提供されれば、二層構造のシステムは、保険の入手可能性を確保すると同時に逆選択を防止し得ることがわかった。地震保険に関しては、基準料率制度が、保険会社に保険の安定供給へのインセンティブを与え得るいっぽうで、地震リスクの保険可能性を損なうパラメータ不確実性および損失発生の相関の高さなどの問題を縮小するために設けられている保険金額制限や保険金総支払限度額などの制度があるために、同保険が個人・家計に対して十分なリスク移転と補償の手段を提供していないおそれもあることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の損害保険市場全体を対象にした研究に加え、個々の保険種目に焦点を当てた詳細な計量分析を行うとともに、市場均衡モデルを用いた理論分析も開始し、研究を深めている。
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Strategy for Future Research Activity |
自賠責保険および地震保険の基準料率制度の有効性に関する分析を継続し、米国、欧州諸国、韓国および台湾などわが国に先行して様々な保険料率規制を試みている諸外国の状況を踏まえて、今後の両保険の価格と補償のあり方を検討する。さらに、これまでの研究結果に基づいて、規制緩和後一定のリスク細分化が許容されながらも事前認可制度がとられている任意自動車保険、火災保険および傷害保険などの保険種目を含めたわが国の損害保険市場における保険料率規制と競争のあり方を探る。
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