2010 Fiscal Year Annual Research Report
四半期財務諸表に基づく企業利益の不確実性リスクの評価に関する実証研究
Project/Area Number |
22530479
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
桜井 久勝 神戸大学, 大学院・経営学研究科, 教授 (10127368)
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Keywords | 四半期財務諸表 / 損益分岐点分析 / 変動費率 / 費目別法 / 総費用法 / 最小二乗法 / 営業レバレッジ |
Research Abstract |
本研究は、四半期連結財務諸表を用いて導出すると変動費と固定費の区分に基づいて、信頼性の高い損益分岐点比率を算定しうる可能性を示したうえで、この損益分岐点比率が意味する企業利益の不確実性リスクから、企業価値評価に不可欠な自己資本コストを推定する方法を実証的に構築することを目的とする。このため研究期間の初年度に該当する本年は、四半期財務諸表を用いて企業の営業費用を変動費と固定費に区分する統計的方法の適用結果の信頼性について実証分析した。 営業費用を変動費と固定費に区分する方法には、(1)総費用法、(2)最小二乗法、および(3)費目別法があり、通常は費目別法が優位であると考えられるのに対し、連結財務諸表には製造原価明細書が添付されず、費目別法の採用は一般に不可能であるため、最小二乗法の適用が有望視される。ただしその実践適用に5年間の年次の時系列データを用いた場合には、費用構造の時系列的変化の影響を強く受けるため、推定結果の信頼性が損なわれる可能性が高い。これに対し四半期データを用いれば、たとえ8期間のデータで推定を行ってもその長さは2年にすぎないため、この欠陥を回避できる可能性が高いと期待される。 そこで東京証券取引所1部上場企業をサンプルとして、年次財務諸表を用いた推定と四半期財務諸表を用いた推定を比較したところ、変動費率が100%を超えない企業および固定費額の推定値がマイナスにならない企業の割合ともに、四半期財務諸表による方が明らかに大きく、四半期財務諸表を用いた損益分岐点推定の信頼性を支持する実証的証拠が得られた。
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