2011 Fiscal Year Annual Research Report
四半期財務諸表に基づく企業利益の不確実性リスクの評価に関する実証研究
Project/Area Number |
22530479
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
桜井 久勝 神戸大学, 大学院・経営学研究科, 教授 (10127368)
|
Keywords | 四半期財務諸表 / 損益分岐点分析 / 費目別法 / 総費用法 / 最小二乗法 / 営業レバレッジ / ベータ値 |
Research Abstract |
本研究は、四半期連結財務諸表を用いて導出する変動費と固定費の区分に基づいて、信頼性の高い損益分岐点比率を算定しうる可能性を示したうえで、この損益分岐点比率が意味する企業利益の不確実性リスクから、企業価値評価に不可欠な自己資本コストを推定する方法を実証的に構築することを目的とする。このため研究期間の第2年度に該当する本年は、四半期財務諸表から推定した損益分岐点および営業レバレッジと、不確実性リスクの尺度としてのベータ値の間で、相関の有無と程度について実証分析した。 営業費用を変動費と固定費に区分する方法のうち、通常は費目別法が優位であると考えられるが、連結財務諸表には製造原価明細書が添付されないため、費目別法の採用が不可能であることから、総費用法や最小二乗法の適用が有望視される。ただしその実践適用に年次の時系列データを用いた場合には、費用構造の時系列的変化の影響を強く受けるため、四半期データの利用が有効であると予想される。 そこで東京証券取引所1部上場企業の2010年と2011年の3月決算期をサンプルとし、年次と四半期の財務諸表による推定結果を比較したところ、変動費率が100%を超えない企業および固定費額の推定値がマイナスにならない企業の割合ともに、四半期財務諸表による方が明らかに大きく、四半期財務諸表を用いた損益分岐点推定の有効性を支持する証拠が得られた。また証券投資意思決定での投資リスク尺度として、株式投資収益率の標準偏差、および市場モデルによるベータ値をとりあげ、損益分岐点および営業レバレッジとの関係を調査したところ、理論どおりプラスの有意な関係が確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は次の3段階を経て完結させる計画である。第1は、四半期財務諸表で推定した損益分岐点の信頼性の確認、第2は、この推定結果と投資収益率のバラツキないしベータ値の間の相関の確認、第3は、資本コストとの相関の確認である。本年度は予定どおり、第2段階まで達成することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる次年度では、第1に、2012年サンプルを追加して再検証すること、第2に、推定した損益分岐点および営業レバレッジと株価形成に反映された資本コストの間のプラスの相関関係の存在を確認する。研究が当初計画以上に進展すれば、財務レバレッジと資本コストの関係についても検証したい。
|