2012 Fiscal Year Annual Research Report
「家族」となることの実践:乳幼児の家族相互行為参加の組織
Project/Area Number |
22530511
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高木 智世 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (00361296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井出 里咲子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (80344844)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 乳幼児 / 家族 / 相互行為 / 会話分析 / マルチモダリティ |
Research Abstract |
本研究では、相互行為場面における多様な資源がどのように子どもの家族相互行為への参加を可能にしているのかを実証的にとらえるために、子どもと養育者の実際の相互行為場面を録音・録画によって記録し、音声・視覚情報を精密に転記したトランスクリプトを作成した上で、厳密な分析手法によって事例分析を積み重ねる。 平成23年度8月に、産休および育児休業のために研究を中断し、平成24年6月に職場復帰と共に研究を再開した。育児休業中の平成24年3月に、幼児による第三位置の修復(自身の発話に対する相手の反応を踏まえて相手の誤解に対処する行為)に焦点を当て、マルチモダリティ(相互行為における言語的・身体的・環境的資源の複合的利用)の視点から分析した研究が学術誌(『社会言語科学』)に掲載された。また、エスノメソドロジー・会話分析の立場から子どもが参加者に含まれる相互行為を分析することがどのように発達心理学に貢献しうるかを論じた論考を『発達科学ハンドブック1 発達心理学と隣接領域の理論・方法論』に寄稿し、平成25年3月に出版された。同じく平成25年3月には、研究代表者と同様に会話分析の専門家であり、相互行為における子どもの身体的ふるまいについての研究で重要な知見を提示しているMardi Kidwell氏(ニューハンプシャー大学)、および、子どもの相互行為場面のデータを分析している気鋭の会話分析研究者数名を招き、国際ワークショップを開催した(研究代表者自身も登壇)。各発表について、大変活発に有意義な議論が為された。現在、Kidwell氏とは、日米の子どもの相互行為分析研究をまとめ、両社会文化における保育・育児のあり方の違いを相互行為の組織の水準で明らかにする研究書の共同編集の可能性について検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年(平成24年)5月末まで育児休業によりおよそ10か月研究を中断していたため、当初のタイムテーブルより遅れ気味ではあるが、分析の積み重ねを通して様々な知見が引き出されている。
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Strategy for Future Research Activity |
事例分析の積み重ねにより様々な知見が引き出されているが、研究課題に対する解として一定のまとまった像を結ぶには至っていないので、今後、個々の事例から引き出されたことを、どのようにより大きな深い知見へと縒り合せていくかが課題となる。また、会話分析とことばのエスノグラフィーの方法を統合していく試みについては、この二つの方法論の間に当初の想定よりも大きな相違があることが認識されるにとどまっている。しかし、当面は、方法論の違いを乗り越えることに労力を費やすよりも、研究代表者が専門とする会話分析の方法を軸に分析を深めていくことが緊要であると考える。
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Research Products
(4 results)