2011 Fiscal Year Annual Research Report
バングラデシュの船舶リサイクル過程に関する実証的研究
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22530586
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
佐藤 彰男 龍谷大学, 社会学部, 教授 (70249514)
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Keywords | リサイクル / バングラデシュ / 発展途上国 / 労働問題 / 環境問題 / 解撤 |
Research Abstract |
本年度はリサイクル過程全体のうち、主として廃船由来のスクラップ鉄の再生に従事する労働者を対象として、インタビュー調査を実施した。また昨年度に引き続き、解撤労働者へのインタビュー調査も行った。廃棄された大型商用船舶が解撤された後には、船体鋼板をはじめとする大量のスクラップ鉄が採取される。その大部分はローリングミルと呼ばれる伸鉄工場において、鉄筋等の建築資材として、バングラデシュ国内で再利用されており、伸鉄に従事する労働者も数多い。解撤工の過半を占めるヘルパーまたはワイヤーと呼ばれる荷役労働者たちは、ほぼ例外なく地方農村部からの出稼ぎ労働者であったのに対し、本年度の調査によれば、伸鉄工場の労働者たちは、ほとんどが都市部出身の地付層である。彼らの職種は多岐に細分化されているが、大部分は重労働でありながら、報酬額は低い。さらに多くの回答者が、閑散期にはレイオフを体験している。また多くの職種で火傷や重量物落下等による受傷事故が多発しているが、工場側が講じている安全対策は皆無に近い。 以上のように、伸鉄労働者の労働環境は劣悪といってよいが、それでもなお解撤工がおかれている状況に比較すれば、人身事故の程度、就労の安定性といった面で、やや「まし」といえる。そのような事実からは、船舶リサイクルに関連した労働のなかでも、とりわけ解撤作業が過酷なものであるがゆえに、都市底辺層よりもさらに社会的に不利な状況にある農村出稼ぎ者に、もっぱら割り当てられている可能性が高いことが推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、本年度終了までに、解撤労働者を対象とした調査と、伸鉄・木材加工労働者を対象とした予備調査を予定していた。現時点では、解撤労働者へのインタビュー調査と並行して、伸鉄労働者への調査もかなり進んでおり、その点では研究計画に先んじている。他方、解撤労働者へのアンケート調査については、実施が難航しており、計画より遅れがみられるため、評価としては「おおむね順調」を選んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね調査計画どおりに進行する予定である。ただし2010年秋から2011年春にかけて、現地の高裁判決により、廃棄船舶の輸入が停止され、船舶リサイクル産業全体が極端な閑散期に入った。現時点では廃船の輸入は再開されているが、解撤はほとんど停止された状態にある。このような事態が継続すれば、調査計画を大幅に変更しなければならなくなる可能性も低くはないと予想される。
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Research Products
(1 results)