2012 Fiscal Year Annual Research Report
バングラデシュの船舶リサイクル過程に関する実証的研究
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22530586
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
佐藤 彰男 龍谷大学, 社会学部, 教授 (70249514)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | リサイクル / バングラデシュ / 途上国 / 労働 / 環境 / 解撤 / 都市 |
Research Abstract |
本年度は、主としてスクラップ鉄を原材料とした製鉄および廃木材の加工に従事する労働者を対象とした調査研究を実施した。大型廃棄船舶からは、大量のスクラップ鉄が採取されるが、それらは主に鉄筋に加工され、建築資材としてバングラデシュ国内の市場に流通している。グローバル経済の影響をうけて、解撤産業が非常に大きな繁閑の波にさらされることは、昨年度までの研究で明らかにされた。解撤によって採取されるスクラップ鉄が原材料の大部分をしめるバングラデシュの製鉄業においては、スクラップ鉄の生産量が、ほとんどそのまま製鉄産業の生産量を決定する。 そのため解撤の場合と同様に、製鉄労働者の雇用・就業状況も、相当に不安定なものとなっている。本年度の調査からは、職種ごとに細分化された製鉄労働の実態だけでなく、頻繁なレイオフの状況や、レイオフ時の生活防衛のための方策などを、詳しく知ることができた。 スクラップ鉄による製鉄に比して、産業としての規模は小さいものの、廃船由来の木材からは大量の家具が製造され、安価に販売されている。それらの再生家具を作成する工場・作業所で働く労働者の多くは、一定の見習い期間を経た後、家具職人となるが、彼らのほとんどは工場に雇用されるのではなく、請負契約によって働いている。技能職ということもあり、彼らの収入は解撤・製鉄工に比して高いが、作業の危険性は低い。また廃木材による家具製造は、梱包材など廃船以外の材料供給源をもつため、繁閑の波がそれほど大きくない。この点からみれば、船舶リサイクルにまつわる労働のうちでは、廃木材再生に従事する労働者たちが、最も上層に位置すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、13年度末までに解撤・製鉄・家具工場の経営者および労働者に関する現地調査を実施する予定であったが、それらの調査活動は順調に推移しており、いずれにつてもほぼ満足な結果を得ている。また日本国内での解撤事業については、前倒し的に予定部分の調査を終了しており、補足的調査を残すのみとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本助成研究の申請時には予定していなかったが、2013年4月から2014年3月まで、バングラデシュにて在外研究に従事することになった。一年間、調査地に居住するため、当初の計画以上の精細な調査研究が可能と考えている。その一方で、当該期間中は帰国できないので、日本の船舶リサイクルに関する研究については、主に文献調査としてすすめることに方針を転換する予定である。なお本年、バングラデシュでは国政選挙が間近にせまっていることなどから、政治的・宗教的なテロ行為が全国規模で頻発している。このような政情不安が本助成研究の進捗に対しても、ある程度の障害となることが懸念される。
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Research Products
(2 results)