Research Abstract |
本研究は,中学生の仲間集団に見られる排他性が学級や自分の所属する集団の適応感,集団内メンバーの関係性,いじめが起こった場合の状況認知に及ぼす影響について検討を行った。排他性は,排他性欲求と排他性規範からとらえることができる。前者は,自分の仲間であるかどうかによって相手に対する態度を変えたり,仲間以外の児童と活動することを楽しくないと感じたりする程度の強さ(三島,2004)と定義されており,後者は,実際に所属している仲間集団がとる行動の規範であり,同一行動から構成されるものと定義できる。研究では,架空場面を用いた実験を採用し,排他性欲求(高・低)×排他性規範(高・低)からなる4つのシナリオのうち1つを読ませることで行った。対象は中学1,2年生400名であり,適応感については,シナリオの登場人物になったつもりで,また,いじめなどの関係内外の認知については,客観的な立場で回答を求めた。分析は,排他性欲求×排他性規範×性別の3要因計画で行った。その結果,自分の所属する集団に対する適応感は,排他性規範が高くかつ排他性欲求が低い条件で最も低く評価された。また,学級適応感では,排他性規範の高群が低群より,排他性欲求の高群が低群より,それぞれ低く評価された。さらに,排他性規範が高群は低群より,メンバーのストレスが高く,いじめが起こりやすく,かつ意見表明がしにくいと評価された。排他性規範が高い場合,本来,対等であるはずの仲間集団の中に地位の差が生じていることを示唆させる研究成果であると言えよう。 今後は,これらの知見を踏まえ,仲間集団の排他性が学習意欲などの指標に及ぼす影響過程を明らかにし,こうした問題に対する支援の方策を検討していく。
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