Research Abstract |
研究2年度の本年度は,がん医療現場の臨床心理士(CP)とセルフヘルプ・グループとしてのがん患者会(患者会)の協働に関して,研究目的□「患者会のCPに対する期待の明確化」,□「協働の形態や役割の明確化」,□「協働促進の方法の明確化」のため,全国の患者会265団体の代表者あるいは事務局を対象に,第1部では患者会の組織や活動の概要,協働の有無,協働の形態,協働への期待等を,第2部では会のコミュニティ援助機能やベネフィット・ファインディング(BF)等を聞く記名自記式質問紙調査を郵送法で実施した。第1部では,119団体(44.9%)から有効回答を得た。部位横断的な会が4割,部位限定の会が6割で,後者では乳がん患者会が最も多かった。活動内容は,例会,勉強会,会報発行,相談活動が多かった。開催場所は病院外が病院内を上回った。CPと協働している会は36団体(30.2%)。そこでのCPの役割は,「専門家の立場で会のメンバーの話をよく聴いてくれる」が最も多く,次いで「専門的知識やスキルを教えてくれる」が多かった。CPと協働していない83団体(69.7%)では,CPには「講師として知識やスキルを教えてほしい」という期待が最も多かったが,その一方でCPの必要性を感じないと回答した会も2割あった。今後の協働のためには,CPに関する具体的な情報を患者会に提供してほしいという希望が最も多かった。いずれにしても,CPと患者会との協働の実態が初めて明らかになった。現在,第2部の結果を集計し,CPとの協働の有無と会の援助機能やBFに関する代表者の認識との関連を検討中である。また,第1部ですでにCPとの協働を展開していることが明らかになった患者会を対象に訪問調査を行う準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の交付申請書の研究目的及び研究実施計画に照らすと,調査1は完了したが,調査2を終えることができなかったため,やや遅れていると言える。これは,調査1に入る前提として理論的枠組みを構築するため,地域のセルフヘルプ・グループとしてのがん患者会に関する内外の先行研究の展望論文の執筆に予想以上の時間を要したためである。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように研究の進行に遅れが生じていることと,CPとがん患者会の協働の在り方を検討するに当たり,患者会代表者が自分たちの会のコミュニティ援助機能やBFをどう認知しているかという観点を加味した分析を行うため,コミュニティ援助機能尺度やBF尺度等の開発に関する研究を行っている広島大学大学院教育学研究科博士課程の複数の院生に研究協力者として参加してもらった。このことで研究が促進されたので,最終年度には当初の研究目的を達成できると思われる。
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