Research Abstract |
本研究は,覚せい剤事犯受刑者の薬物再使用のリスク要因である薬物渇望に焦点を当て,それを統制するためのコーピングスキル訓練を開発し,その効果をランダム化比較(RCT)によって検証することを目的としている。 本年度は,まず薬物渇望やコーピングスキルを測定するために,最適な尺度を開発すべく海外の先行研究を検証した。その結果,薬物渇望についてはVisual analogue scale (VAS)を用いることが最適であると判断し,本研究においても活用することとした。またコーピングスキルについては,アルコール依存症研究において広く用いられているCoping Behavior Inventory (CBI) (Litman, et al., 1983) を用いることとし,日本語版を作成した。これにより今後,薬物渇望に対するコーピング反応を客観的に測定することが可能になった。これらの尺度を用い,長期間断薬を継続している者と断薬に何度も失敗している薬物依存者の渇望やコーピングの差を比較し,効果的なコーピングスキルの特定をすることが本年度の具体的な研究内容である。長期断薬継続者としては,自助グループのスタッフやメンバーを対象とし,断薬に複数回失敗している者としては,刑事施設に入所中の受刑者を対象とすることとした。 自助グループについては,東京ダルクを中心に,近隣のダルクのスタッフ,メンバーに随時質問紙を配布し,データ収集中である。ただし,ダルクとの話し合いにより,長期断薬者に限定せず,様々な人々に質問紙を配布する方が調査協力が円滑に進むとの意見を得たため,その方法に従い,一定期間の断薬期間に至らない者は,断薬失敗者のデータをして扱うこととした。一方,刑事施設については,法務省矯正局の協力により,男子施設として東京拘置所,女子施設として笠松刑務所を対象に,男子受刑者50名,女子受刑者50名に対して質問紙を配布し,現在データ収集中である。
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