2012 Fiscal Year Annual Research Report
覚せい剤受刑者に対する薬物渇望統制のためのコーピングスキル訓練プログラムの開発
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22530754
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
原田 隆之 目白大学, 人間学部, 准教授 (10507742)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 覚せい剤依存症 / リラプス・プリベンション / コーピング / 認知行動療法 / 薬物渇望 / 刑事施設 / 自助グループ / ランダム化比較試験 |
Research Abstract |
本研究は,覚せい剤事犯受刑者の薬物再使用のリスク要因である薬物渇望に焦点を当て,それを統制するためのコーピング・スキル訓練を開発し,その効果をランダム化比較(RCT)によって検証することを目的としている。 これまでに薬物渇望やコーピング・スキルを測定する尺度を選定・開発し,これを受刑者200名,自助グループのメンバー180名に送付し,質問紙調査を実施した。データはすべて回収完了し,データ処理も完了した。この調査は,断薬失敗者と長期断薬成功者の薬物コーピングの差を見きわめるための重要な調査であった。 本年度は,このデータを元にして治療プログラムを完成し,試行的に実施した。本プログラムは,覚せい剤依存症に対する認知行動療法プログラムとして米国で開発された「マトリックス・プログラム」を参考にして開発したものであり,「日本版マトリックス・プログラム短縮版」(J-MAT12)と名付けた。これは,薬物依存症治療に特化した「リラプス・プリベンション・モデル」に立脚したものである。 受刑者60名を対象としたランダム化比較試験の結果,治療群のコーピング・スキルが治療後,対照群に比べて有意に上昇したことが明らかになった。コーピング・スキルは断薬に対する最も重要な予測因子であることから,本プログラムの有効性が示唆されたと言える。わが国においては,これまで覚せい剤依存症に対する治療法がなかったが,今回わが国で初めて,わが国の覚せい剤依存症者の特性を考慮した包括的な認知行動療法的プログラムが完成し,さらにこれもわが国で初めてランダム化比較試験によってその効果が実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プログラムの開発と実施という点では,計画以上に進展しているが,女子刑務所での実施が困難で,男子刑務所のみでの実施となったため,おおむね順調であるとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,今回の実施結果を元にプログラムの改良を行うこととする。また,女子刑務所での実施が不可能となれば,今後の研究の方向性を考慮しながら,刑事施設のみならず精神科クリニック,自助グループなどでのプログラム実施を視野に入れ,連携研究者および研究協力者等との連携を深め,実施可能施設を選定することする。
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Research Products
(12 results)