2011 Fiscal Year Annual Research Report
戦前日本における訓育の評価史-情意形成の目標と評価-
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22530820
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
山根 俊喜 鳥取大学, 地域学部, 教授 (70240067)
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Keywords | 教育 / 訓育 / 評価 / 生徒指導 / 生徒管理 / 情意 / 生活指導 / 規律 |
Research Abstract |
本年度は,明治20~30年代の時期の訓育の評価の理論と実践の展開過程およびその特質を、「行状」・「品行」・「操行」・「人物」等の査定法,そしてそこから発展してくる個性調査法を分析,考察した。 主要な結論は以下のとおりである。 1 学制期以来の,「日課優劣表」の実践に見られる,生徒罰則・賞則にもとづく,生徒の外形的行為に基づく機械的とも言える訓育評価のありかたは,明治10年代,生徒の心性開発を目指すペスタロッチ主義教授法の導入期に,修身科の評定の必要から生まれた「性質品評表」の実践にみられるように,生徒の行動観察を手がかりに「性質」という内面的なものにまでその対象を広げることになった。 2 森有礼による人物評価の制度化は,この評価を客観的に行うための,教師による子どもの行動観察を普遍化した。この人物評価の観点は府県でまちまちで,いわゆる三気質を観点としたもの,従前の性質品評表などの観点を用いるもの,人物は学力と対置される概念であったにもかかわらず「知」や「才幹」をその観点とするものなどが存在した。このことは,訓育の統一的目標の不在を意味した。また,評価の「客観性」の担保のため,日課点を復活させる動向,「人物」「品行」などと言われる人格的側面を点数で格づける動向が広がった。評価法を見る限り,集団性への着目は弱く個別主義的傾向が強かった。 3 明治20年代に入り,教育勅語が渙発され,集団的コンフォーミズムの温床である学級制が取り入れられるが,訓育およびその評価に直ちに影響は現れていない。明治30年代に入り,ヘルバルト主義の訓育論,単式学級の広がり,これに伴う同一年齢の学級における個人間差異の発見などを背景にして,教育勅語に示される徳目にしたがった内面形成,学級の集団性および子どもの個性に着目した訓育とその評価の実践,その基礎を提供する個性観察が広まっていった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
資料の収集は順調にいっているが,その検討作業が予定より遅れ,中途までの成果をまとめ切れていない。
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Strategy for Future Research Activity |
提出した研究計画通りすすめる。ただし,大正期~昭和初期については,学級経営論にみられる訓育評価のありかたを事例研究を中心として検討して,学校・教育実践全体のなかでの訓育とその評価の位置を明らかにすることとしたい。
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